VUCA時代に求められるアップスキリング/リスキリングとシンガポールでの取り組み

こんにちは! リーラコーエン シンガポール リサーチャーのShihoです。

総合ビジネスサービスを手がけるPwCが2023年10~11月にかけて実施した世界CEO意識調査によると、回答した世界105ヶ国・地域の4,702人のCEOのうち45%は、「自社が現在の道筋で10年以上生存することに自信がない」と回答したそうです。

一方で、自社の生存可能性に自信がないと回答したCEOの中でビジネスモデル再開発へのアクションを起こしたCEOは、他の楽観的な見方をするCEOよりもわずかに多い傾向にあります。

変化のペースが速く先行き不透明なVUCA時代に生きる私たちにとって、危機感を持ち続けることと共に、企業も個人もアップスキルやリスキリングが欠かせなくなってきています。

今回は、シンガポールも推し進めるアップスキル、リスキリングとそのメリットなどについてお伝えしていきます。


【目次】
1.企業、従業員双方に良い効果をもらたすアップスキリング
2.シンガポールが取り組むアップスキル/リスキリング支援
3.個人はどのようにアップスキリングに取り組むか
4.最後に

 

1.企業、従業員双方に良い効果をもらたすアップスキリング

先のCEO調査にはこのような結果も出ています。

「自社が価値を創造、提供、獲得する方法を変えることを現時点でどの程度阻害していますか」の質問に対して、日本のCEOは「テクノロジーに対する自社の技術不足(27%)」「自社の従業員のスキル不足(24%)」を主な阻害要因として捉えているようです(世界全体はそれぞれ18%、20%)。

実際、新興テクノロジーの発展めざましい現代社会において企業・業界が求めるスキルと個人の保有スキル間の溝、つまりスキルギャップは深刻と言われており、こうした現状を打破するためにも、アップスキリング・リスキリングが提唱されています。

実際にこういった活動は、雇用の継続をもたらすだけでなく、企業・個人双方にメリットをもたらします。

雇用の継続を支援するだけでなく、職場で学びの文化が醸成・促進されたり、外部・社内環境の変化にも対応しやすい従業員を生むことにつながります。

また新しいポジションを考えるにあたっても最初から新規採用に頼ってコストをかけるより、自社社員のスキルを把握しておけば自社社員の中から適任を探すことも容易になるでしょう。


2.シンガポールが取り組むアップスキル/リスキリング支援

かねてより人材資源を重要視するシンガポール政府は、この課題も重く受け止め取り組んできました。

2016年10月から教育省の下で発足したSkills Future Singapore(以下、SFS)という組織及び開発プログラムはこれを象徴するものと言えます。

SFSのミッションは、シンガポール国民が未来に備えスキルを学び習得し、充実したキャリアを形成する、というもの。

主に成人向けに、フィジカル/eラーニング問わず様々な講習や訓練の場を提供しています。
 

実際の講習コースの種類は、多岐に渡ります。

期間では1日単位から年単位のものもあれば、フルタイム/パートタイム、言語も英語が中心ながら他言語の用意もあり、またあらゆる業界で必要とされるスキルに直結した内容となっています。

「スマホでインパクトのある写真を撮るには」といった手軽なものから、大学卒業資格が得られるものまであり、メジャーなものからニッチな分野まで網羅されています。
 

ただ満遍なく網羅されているだけでなく、社会や国家が抱える課題にリーチしているところは、さすがシンガポールと言えます。

マネージャー人材が不足していること、中小企業が従業員への教育研修にコストをかけられないといった課題には優先的にリーチできるよう、そういった課題解消に関連した講習は国家が受講費用を負担する比率を上げるなどの施策がとられており、なんとも合理的です。
 

先般2024年2月の国家予算発表の中で、40歳以上向けのこのSkills Futureのクレジットを大幅に引き上げるという発表もあったように、近年シンガポール政府はこれを更に加速してきている印象を受けます。

単なるトレンドでなく、企業・個人双方が抱えるこの課題に対するシンガポールの本気度が垣間見えますね。



3.個人はどのようにアップスキリングに取り組むか

上のSkills Futureはあくまでシンガポール国民のためのものであり、私を含め在星外国人は自身でアップスキリング、リスキリングのロードマップを描くしかありません。

近年は会社でフレキシブル・ベネフィットを導入している会社も多く、弊社もアップスキル、リスキリングに関連する費用が会社に請求できるといった制度があります。

こうした制度を利用するのもひとつですし、今はインターネットのおかげで世界のどこにいても受講できるeラーニング環境が数多くあります。

ビジネス版Facebookとして有名なLinkedInにも、同様のツールが豊富に用意されています。
 

ネットワーキングイベントや国際会議といったMICEの機会も多いシンガポールは、自身を露出する(Exposure)にもうってつけです。

職場関連はもちろん、興味のある分野のイベントがあれば足を運んでみるのも一手です。
 

また、スキル獲得と聞くとハードスキルを思い浮かべがちですが、ソフトスキルも依然重要視されていることを忘れてはいけません。

弊社で取り扱う求人にも「細部まで気配りのできる方」「チームワークができる方」「マルチタスクやファストペースな職場環境になじめる方」といった記述は今も多く見られます。

こういった点は採用の場では主に面接の場でコミュニケーションを通じてチェックが入るので、求職中の方は求人要件にしっかり目を通しましょう。
 

ただ、特定のスキルを習得したからと言って一生安泰というのはありえません。

ある専門家は「習得したスキルは5年ごとにその価値の半分を失う」とも指摘しています。


ここで大事なのは学び続ける姿勢と、新たなスキルを習得したという自信は時が経っても陳腐化しない、ということではないでしょうか。

まずは現在の職務で必要なスキルが顕在化しているようであればそれに関連したものを、そうでなければ自身の興味の範囲内で何か学べる分野はありそうか、サーチしてみてはいかがでしょう。

 


4.最後に

東京都で民間人として初の公立中学校の校長を務めた藤原和博さんの提唱する理論に、「3つのキャリアの掛け算」というものがあります。

これは、3つのキャリアを5~10年ごとに本気で取り組み、それらを掛け合わせることで希少性を獲得し、100万人に1人の人材になれるというものです。

藤原さんであれば「リクルート社での営業プレゼン × マネジメント経験 × 公教育」ですが、なかなかこんな方はいませんよね。

この理論の面白いところは、一つのキャリアでは並程度だったとしても、それを何と掛け合わせるかによって希少性は大きく変わるという点です。
 

少し先の将来も見通しが不透明な社会ではありますが、自分の将来を決めるのは自分自身

自身の成長を思い描き、それに沿ったアクションをとることは、自分自身だけでなく現在の職場や共に働く仲間たち、家族や友人にもきっと良い循環をもたらすことでしょう。

読者の皆様の実りあるキャリア形成を、心より応援いたします。


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