就労ビザ、厳格化へ:シンガポール予算案2026要点

こんにちは。
リーラコーエンシンガポール マーケティング担当の野上です。
2026年2月12日、本年度のシンガポール予算案が発表されました。
今回の予算案は、単なる景気対策にとどまらず、雇用構造の見直しや人材政策、AI活用、そして企業競争力の強化までを見据えた中長期的な方向性を示す内容となりました。
歳入は約1,347億5,000万シンガポールドル、歳出は約1,373億2,000万シンガポールドルが見込まれており、経済成長と社会の安定の両立に向けた継続的な投資姿勢が示されています。
法人税の収入も約377億7,000万ドルと予測されており、企業活動が引き続き堅調に推移していることが伺える内容となりました。
ローレンス・ウォン首相兼財務相は、今回の予算案について「不確実な世界情勢を見据えながら、国としての競争力を高め、持続的な成長と雇用の安定を実現するための施策である」と説明しています。
その中でも、私たち在星企業にとって特に影響が大きいのが、外国人就労ビザ要件の厳格化と賃金基準の見直しです。
今年2026年から2028年にかけて段階的に制度変更が進む予定であり、今後の採用計画や人件費構造を見直す必要が出てくるでしょう。
そこで今回は、就労ビザ要件の厳格化の詳細を中心に、今回の予算案で発表された主なポイントを解説してまいります。
【目次】
1. EP/Sパス付与のための最低賃金引き上げ
2. LQS引き上げで外国人雇用枠にも影響
3. 外国人雇用コストは中長期的に上昇へ
4.「シンガポーリアン・コア」強化という政策の軸
5. 企業支援策も同時に実施
6. SSG・WSG統合へ
7. 国家戦略としてのAI活用が本格始動
8. 最後に
1. EP/Sパス付与のための最低賃金引き上げ
今回発表された予算案でまず押さえておきたいのが、EP (Employment Pass) とSパスの取得要件の引き上げです。
来年2027年1月以降、新規申請者の最低給与基準が段階的に引き上げられる予定であることが分かりました。
EPでは、一般分野の最低給与がこれまでの5,600SGDから6,000SGDドルへ引き上げられ、金融サービス分野では現在の6,200SGDから6,600SGDが新基準となります。
Sパスについても、一般分野で3,300SGDから3,600SGD、金融分野で3,800SGDから4,000SGDへと引き上げられる予定です。
更新申請については、2028年以降に新基準が適用される見込みとなっています。
今回の改定により、中堅外国人材の採用ではこれまで以上に給与水準を意識した検討が必要になってくるでしょう。
特にSパスからEPへの切り替えを考えていた場合、または中間層を外国人採用で補ってきた企業にとっては、改めて人件費や採用コストを見直すタイミングになりそうです。
2. LQS引き上げで外国人雇用枠にも影響
さらに、2026年7月から予定されているLQS (Local Qualifying Salary) が引き上げられることも発表されました。
LQSとは、企業が外国人をSパスやワークパーミットで採用する際に基準となるローカル従業員の最低給与水準を指します。
今回の改定では、このLQSが1,600SGDから1,800SGDへ引き上げられます。
シンガポールでは、企業が一定数以上のローカル従業員 (国民または永住権保持者) をLQS基準以上の給与で雇用していなければ、外国人雇用枠を維持することができません。
そのため、今回の見直しは、賃金水準の調整にとどまらず外国人採用人数や人員バランスに直接影響する制度変更といえます。
3. 外国人雇用コストは中長期的に上昇へ

また、ウォン首相兼財務相は、2028年以降のWP (ワークパーミット) 保持者に対する外国人労働者税、いわゆる人頭税の見直しに関する内容も発表しました。
フルタイムで働くWP人材については、海運分野で月100SGD、石油・化学などのプロセス分野で月150SGDの最低月額給与の引き上げが予定されており、製造業やサービス業でも税率区分の再編が行われる見込みです。
これらの変更は2028年から段階的に導入される予定ですが、外国人雇用にかかる総コストは中長期的に上昇する方向にあると考えられます。
とくに外国人労働力への依存度が高い業界では、今後の人員構成やコスト設計を数年単位で見直していく必要が出てきそうです。
企業にとっては、単年度の採用コストだけでなく、今後数年を見据えた人件費計画や採用方針の見直しが必要となるでしょう。
4.「シンガポーリアン・コア」強化という政策の軸
ウォン首相は、今回の制度見直しの背景にローカル人材を雇用の中心に据える「シンガポーリアン・コア」強化の方針があるとしました。
賃金底上げとスキル向上を進めながら、外国人雇用とのバランスを再調整することで、持続的な経済成長を目指す考えです。
また、世界経済の不透明感が続く中で企業競争力を維持するためには、生産性向上と人材の高度化が不可欠とされています。
The Straits Timesなどの主要報道でも、今回の予算案は将来の不確実性に備えた競争力再設計として位置づけられています。
5. 企業支援策も同時に実施
一方で、規制の強化と同時に企業負担を緩和する施策も発表されました。
2026年賦課年度には法人税の40%還付が実施されます。
還付額は1社あたり最大3万SGDで、対象企業には最低1,500SGDの優遇が適用される見込みです。
近年のコスト上昇や外部環境の不透明感を踏まえ、企業の負担を一定程度軽減しながら競争力維持を後押しする狙いがあるとみられます。
賃金上昇や人件費の見直しが進むなかで、こうした税制面での支援は短期的なコスト調整の一助となりそうです。
さらに、低所得層の賃上げを支援する「累進賃金クレジット制度 (PWCS)」についても、政府の補助割合が20%から30%へ引き上げられ、支援期間も2028年までと2年間延長される予定です。
また、2027年以降はPWCSの対象となる低所得層従業員の平均昇給額も引き上げられる見込みです。
これまでの月100SGDから月200SGDへと倍増する予定で、企業にとっては、補助制度を活用しながら賃上げをどのように進めるかが一つのポイントになりそうです。
6. SSG・WSG統合へ
政府の人材育成機関であるスキルズ・フューチャー・シンガポール (SkillsFuture Singapore :通称SSG) とワークフォース・シンガポール (Workforce Singapore : 通称WSG) は、今後ひとつの組織へ統合される予定であることも分かりました。
ウォン首相は、SSGを通じて生涯学習や社会人の学び直しが広く浸透してきたことを踏まえ、「より一体的な人材育成・就労支援を実現するための再編である」と説明しました。
新組織は人材開発省 (MOM) と教育省 (MOE) の共同管轄のもと、企業と個人双方に対するスキル開発支援をさらに強化していく方針です。
7. 国家戦略としてのAI活用が本格始動
今回の予算案では、国全体でAI導入をさらに加速させる方針も示されました。
ウォン首相は、社会全体でAIを生かすAI主導の変革を促す新施策として、『AIミッションズ』を開始すると発表しました。
「先端製造業」「コネクティビティー」「金融」「ヘルスケア」の4分野を重点領域とし、産業横断でAI活用を推進していく見込みです。
あわせて、AI関連の国家戦略を統括する「国家AIカウンシル (National AI Council) 」を新設し、政策立案と課題解決を加速することも発表されました。
企業のAI変革を後押しする「チャンピオン・オブ・AI・プログラム (Champion of AI Program) 」や、AI支出を対象に含めた「エンタープライズ・イノベーション・スキーム (Enterprise Innovation Scheme) 」の拡張、さらにはAIツール導入を支援する生産性向上補助(PSG)の強化など、企業支援策も拡充されます。
中部ワンノースには、企業間連携や技術交流を促進する「AIパーク」を新設し、AIエコシステムの形成を図ります。
ウォン首相は、AIリテラシーが今後は「単なる競争優位ではなく“業務遂行の前提条件”へと移行する」と指摘しています。
実際にAIを導入している企業では、コール対応時間の削減や社内レポート作成の大幅な迅速化など、生産性向上の具体的成果も報告されています。
こうした取り組みを通じ、AIを国家戦略の中核に据え産業構造全体の高度化を進めていく方針です。
8. 最後に
今回は、シンガポール予算案2026における就労ビザ要件の厳格化と企業への影響についてご紹介しました。
EP・Sパスの給与基準引き上げ、LQSの見直し、外国人雇用コストの中長期的な上昇など今回の予算案は企業の採用・人件費戦略に直接影響する内容が多く含まれています。
同時に、法人税還付や賃上げ支援、AI導入促進など、企業競争力を維持・強化するための支援策も打ち出されており、「規制強化と成長支援」が並行して進められている点が特徴です。
今後のシンガポールでは、外国人材への依存だけでなく、ローカル人材の活用、賃金構造の見直し、生産性向上やAI活用を含めた総合的な人材戦略がより重要になっていくでしょう。
制度変更は段階的に実施される予定ですが、企業にとってはすでに2026年から準備を進めるべき転換点とも言えます。
今後の採用計画や組織設計を検討するうえで、本予算案の方向性を早めに押さえておくことが、競争力維持の鍵となりそうです。
※本記事はシンガポール政府発表および各種公開情報をもとに作成しています
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