ナショナルデー2025 施政方針演説の要点 「We-First」社会の実現に向けたシンガポールの未来図とは

こんにちは。

リーラコーエンシンガポール マーケティング担当の野上です。

先日のナショナルデーを経て、建国60周年を迎えたシンガポール。

このほど2025年8月17日、ローレンス・ウォン首相が、アンモキオにある技術教育研究所(ITE)本部にてナショナルデー施政方針演説を行いました。

首相は冒頭でシンガポールのこれまでを振り返りながら「今を生きる世代が結束してシンガポールを『新しい章』へ、We-Firstに進めていく時だ」とし、「経済」、「高齢者」、「若者」、「将来のプラン」そして「シンガポールの精神」という5つの柱に沿って演説を展開しました。

今回は、そんな施政方針演説の要点をご紹介してまいります。


【目次】
1.雇用を戦略の中心に
2.AIと量子コンピューティングによる未来設計
3.若者とデジタル・レジリエンス
4.超高齢社会への対応
5.シンガポール北部の再開発
6.「We-First」な社会へ
7.最後に


1.雇用を戦略の中心に

ウォン首相は演説で、「シンガポールの経済戦略の基盤は雇用である」と位置づけ、コミュニティレベルでのジョブマッチングや学校でのキャリアフェアなど、就職支援の強化を発表しました。

例えば、コミュニティ開発評議会(CDC)が地元の中小企業やパートナーと連携し、求職者と身近な職場を結び付ける機会の提供を計画中であるとし、さらにITEやポリテクニック、大学には企業が直接訪問し、学生との交流やキャリアフェアを開催する計画も明らかにしました。


また、今の世界経済情勢については「乱気流に直面している」とし、米国の関税政策の先行き不透明さが今後シンガポール経済に圧力をもたらす可能性への懸念を示しました。

このような背景から、ガン・キムヨン副首相が議長を務める「経済レジリエンス特別委員会」を発足させ、関税やサプライチェーンの混乱といった長期的な課題への対応策を検討していくことも発表しました。

不安定な経済情勢が続くなかで、政府は今後打ち出す各種政策を通じて国内の雇用の安定を確保していく考えです。

これにより、企業は優秀な人材へのアクセスを一層強化できるほか、地元の人材や外国人駐在員を含む求職者にとっても、新たなキャリアに挑戦するチャンスは引き続き開かれていると言えるでしょう。


以下では、その一例となる支援策です。


卒業生を支える新たなトレーニーシップ制度

今後、シンガポールのITE、ポリテクニック、大学の卒業生を対象とした新しいトレーニーシップ制度の導入を開始することが発表されました。

本制度への参加者は、企業での実務経験を積みながら手当を受け取ることができるそう。

また、本制度は景気後退時には制度の規模を拡大して若手人材のセーフティーネットとして機能させるとしています。


ミッドキャリア世代への支援強化

40歳以上の社会人といったミッドキャリア世代には「SkillsFuture Level Up」プログラムが拡充されます。

これまで全日制に限られていた学習手当が、パートタイムのコースにも利用可能となり、民間の教育機関や業界リーダーによる新しい研修プログラムが追加される予定です。


2.AIと量子コンピューティングによる未来設計

今回の演説で大きく取り上げられたのが人工知能(AI)です。

ウォン首相は、国として今後注力すべき最も重要な分野としてイノベーションとテクノロジーを掲げ、生産性の向上や国民の生活水準の向上にはこれらの推進が不可欠であるとの考えを示しました。

イノベーションの一例として取り上げられたのがAIで、すでに公共部門のコールセンターでAIが4言語で通話を文字起こして要約する仕組みを導入していることを紹介。

また、歯科チェーンのQ&M Dentalでは診断補助にAIが活用され、トゥアス港やチャンギ空港でもAIやロボティクスによる自動化が進んでいることを例に挙げました。

一方で、現在活用されているAIは、その潜在力のほんの一部に過ぎないと指摘し、経済活動における生産性向上や新たな価値創出への応用こそが真の「ゲームチェンジャー」になるとの見解を示しました。


そのうえで、大企業だけでなく中小の企業などすべての企業がAIの恩恵を享受できるよう、政府としてAI導入支援を一層強化していく方針を明らかにしました。


さらに、シンガポールはAIにとどまらず、今後10〜20年で産業を大きく変える可能性を持つ量子コンピューティングへの投資も強化することが発表されました。

これにより企業は新技術を活用した生産性向上を目指すことができ、働く人々にはデジタルリテラシーや柔軟な適応力がますます求められることになります。


「AIが国内の雇用機会を奪わないか」という懸念に対しては、ウォン首相は演説で、「今すぐに最先端の技術を身に着けて欲しいというわけではない。政府としては、労組や労働者と連携しながら包括的に労働者の技能向上を支援していく」と説明しました。


3.若者とデジタル・レジリエンス

若者へのメッセージとしては、喫煙代替品(ベイピング)やスクリーンタイムの課題に言及。

特に乳幼児には極力スクリーンタイムを控えるべきだと語りました。


教育面ではAI教育への取り組みも紹介。教育の現場では、語学学習にチャットボットを使うといった創造的な活用が進んでいます。

一方で、単にAIを使うのではなく、それを批判的に分析する力を養うことが大事だとし、独立した思考力を培う教育方針が打ち出されました。


将来の労働市場において、単にデジタルスキルに優れるだけでなく、価値観や創造力、共感力を重視できる人材が求められることが示されています。


4.超高齢社会への対応

ウォン首相は演説で、シンガポールは近く「超高齢社会」(人口の21%以上が65歳以上)に突入することに触れ、「高齢者が安心して健康に寿命を伸ばせるような」支援策を展開するとしました。

そこで新たに「Age Well Neighbourhoods」プログラムの導入が発表され、地域の中で高齢者が安心して暮らせる環境づくりを進めていくことが明らかになりました。

さらに、住宅街の中に医療サービスを提供できる機関を導入したり、日常生活のサポートや家事支援を提供したりする仕組みの整備が予定されます。

こうした取り組みにより、高齢化に対応した医療・ウェルネス産業への新しいビジネスチャンスの創出が期待できます。

また、職場でも多世代が共に働く環境を前提にした準備が求められるでしょう。


5.シンガポール北部の再開発

ウッドランズやクランジ地区などシンガポール北部の再開発計画も発表されました。

ウッドランズでは、5倍規模に拡張された新しいチェックポイントやRTSリンク(2026年末開通予定)、さらには約4,000戸のHDB住宅の整備について言及されました。

クランジでは旧競馬場跡地に約14,000戸の新しい住宅街と新MRT駅が誕生。

センバワンでは造船所跡地を再利用し、ウォーターフロント型のコミュニティや商業施設の開発を進めるとしました。

新しいビジネス拠点や人材の集積地の形成により、企業にとっては新しい市場が開けるとともに、住居や生活環境の選択肢が広がっていくことが想定されます。


6.「We-First」な社会へ

演説の締めくくりでウォン首相は、「シンガポールの強みは“我々”を優先する社会にある」と力強く語りました。

政府が一方的に施策を進めるのではなく、市民や企業とともに形づくることが重要だとし、国民が主体的に国の未来を共に築いていける仕組みを拡充していくと語りました。

そのような社会下においては、企業にとっても社会貢献やコミュニティとの協働はますます大切になるでしょう。

働く人々にとっても、自らの役割を超えて社会に貢献する姿勢が評価される時代となることが予想されます。


7.最後に

今回は、ウォン首相の2025年ナショナルデー施政演説の要点をご紹介してまいりました。

シンガポールの次の10年を「雇用」「スキル」「協働によるレジリエンス」で形づくっていくという明確な方向性を示された演説だったように感じます。


企業にとっては、AIや量子コンピューティングの導入、ミッドキャリア層のスキル転換支援、人口構造の変化への対応が重要課題となります。

また、働く人々にとっては、新しいキャリア機会やスキルアップの選択肢、社会全体からのサポートが引き続き確保されるという安心感が示されたと言えるでしょう。


ウォン首相がリー・シェンロン前首相から政権を引き継いでから1年余り。

総選挙での勝利を経て臨んだ今回の演説は、「シンガポールの新しい章」の幕開けを印象づける内容となりました。

引き続き、私たちリーラコーエンシンガポールも新たな章をスタートするシンガポールの動向を注意深く見守ってまいります。
 

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