怪しい欠勤、増加中? 医療証明書の乱用から見える、働く人の「病休」問題
こんにちは! リーラコーエン シンガポール リサーチャーのShihoです。
シンガポールの職場で定着している「病気休暇」。
Medical Leave、略してMLと呼ばれる病気休暇制度 (別名Sick Leave)は、シンガポール雇用法 (Employment Act) の下、条件付きで全ての従業員に有給での病欠が保証された仕組みです。
近年、このML取得に関連して、問題提起があることをご存知でしょうか。
本ブログでは、病気休暇の乱用から透けて見える、社会の「アブセンティーイズム」問題について、取り上げてまいります。
【目次】
1. 病気休暇Medical Leaveの現状
2. 企業が頭を悩ます「アブセンティーイズム」
3. アブセンティーイズムがもたらす影響
4. アブセンティーイズムを減らす努力を
5. 最後に
1. 病気休暇Medical Leaveの現状
シンガポール雇用法で定められた病気休暇。
勤続3ヶ月以降、全ての従業員に年間最低14日の権利が発生する、有給で病気休暇が取得できる制度のことを指します。
制度の説明は【過去記事】今だからこそ知っておきたい、シンガポールの病気休暇「Medical Leave」に詳しく掲載しておりますので、こちらをご参照ください。
一般的に病欠は欠勤扱いになる日本と比べると、労働者保護の観点から優れた仕組みと言えるかと思います。
一方で、約1年前に報じられた、このニュースを憶えている方もいらっしゃるかもしれません。
【過去記事】シンガポール、医療証明書の乱用防止へ規制強化を検討
医師に診察を受けた上で、病状や治癒に必要な日数が記入されて発行される医療証明書、通称MC (Medical Certificate)。
病気休暇を会社に申請するためにはこれが必要なのですが、近年、MCの発行や診察内容に対して疑義が唱えられているのです。
これは、コロナ禍によってオンライン診察をする医療事業者が格段に増え、適切な診察をしたのかどうか疑わしいケースが増えていることが背景にあります。
上のニュースはあくまで医療従事者向けに適切な診察を促すよう警告を送るといった意味合いが強いものでした。
ただし、MCの乱用が横行する背景には「過度の欠勤」の増加があります。
「本当は働けるけれど、仕事を休みたい」「でも有給休暇(AL)を使うのは避けたい」と考えてMLを取得する人が多い、という事情が見え隠れしているのです。
2. 企業が頭を悩ます「アブセンティーイズム」
正当な理由や事前の通知なしに、頻繁、または習慣的に欠勤をすることを英語でアブセンティーイズム(Absenteeism)と言い、Excessive Absenteeismは「過度の欠勤」と言い換えられます。
今このアブセンティーイズムが、シンガポールでも問題視されてきています。
シンガポール人材開発省(MOM) の調査によると、近年このようなことが明らかになっています。
・2022年、正当な理由のない欠勤が全業種の休業日数の6%以上を占めた
・2024年、リスク調査会社AONシンガポールの報告書によると「従業員の健康関連での欠勤は年間33億シンガポールドル以上のコスト負担を企業に強いている」
・グーグル・トレンドでは「過度の欠勤 - Excessive Absenteeism」というワードの検索件数が、過去1年間で世界的に160%以上も急増
検索トレンドの上昇から見るに、これはどうやらシンガポールだけの問題でもないようです。
このように、MC乱用問題は氷山の一角で、国民の生産性や士気、ひいては企業利益に悪影響を与える社会問題にまでアブセンティーイズムがかかわっていることが分かります。
3. アブセンティーイズムがもたらす影響
アブセンティーイズムがもたらす影響として、このようなものがあります。
【企業への影響】
・業務の中断:スタッフの欠勤が頻発することでワークフローや納期に支障をきたす
・コスト負担の増加:臨時の代替要員、残業代、生産性の低下などの追加コストが発生
・チームの士気低下:周囲の同僚が業務に負担を感じたり、状況に不満を感じる可能性がある
【個人への影響】
・懲戒処分のリスク:習慣的な欠勤が続くことで雇用主から警告、人事考課、解雇につながる可能性がある
・キャリアへのダメージ:雇用主が欠勤をコミットメントの欠如とみなす可能性がある
・成長機会の喪失:頻繁に欠勤すると昇進や昇給、また指導業務やトレーニングが受けられなくなる可能性がある
このように、企業・個人双方にとってアブセンティーイズムは大きな問題と言えます。
アブセンティーイズムの発生理由は各人各様でしょうが、職場のメンタルヘルス問題や採用・配属のミスマッチによって起きている可能性も無視できないでしょう。
では一体どのくらいであれば、欠勤が「過度」と言えるのでしょうか。
この問いに対して絶対的な定義はありませんが、一般的な人事の指標では、
・30日間のうちに3回以上の無断欠勤があった場合
・短期の病気休暇が重なる場合 (例:四半期に7~10日など)
・月曜や金曜に休むパターンが頻発すると「ソフトなアブセンティーイズム」の可能性あり
と見なされています。
医療や介護ニーズが絡む場合、個人によってケースは様々ですので、十把一絡げに決めつけて当然良いものではありません。
ここばかりはマネジメントや人事による見極めが求められます。
4. アブセンティーイズムを防止・減らす努力を
事実上の休業状態である、このアブセンティーイズムに陥ることを防ぐ、また少しでもその状態から抜け出すため、参考例として以下のような方法があります。
【企業ができること】
・従業員の出勤パターンを把握し、早めにフィードバックにつなげる(HRテクノロジーの活用も◎)
・職場復帰への面接の実施、欠勤が続く根本的な原因を把握する
・柔軟な勤務形態とメンタルヘルスサポートの推進
・出勤率が高い従業員へのインセンティブ授与
・適切な休暇取得を従業員に勧め、ワーク・ライフ・バランスを推進
【個人ができること】
・体調不良や勤務ができない時は、理由も併せて積極的に会社とコミュニケーションをとっておく
・休暇は責任をもって取得し、緊急の場合を除いて直前での有給休暇申請は避ける
・燃え尽き症候群や、個人的事情が勤務意欲の減退に影響している場合は、上長や人事にサポートを求める
5. 最後に
今回は、シンガポール特有の福利厚生「病気休暇(ML)」の乱用から透けて見える、アブセンティーイズム問題について取り上げてまいりました。
ちなみにこの病気休暇ですが、日本では馴染みのないもののように私は捉えていましたが、どうやら日本でも2022年時点で2割強の企業が導入しているそうです(2022年・厚生労働省調査)。
労働者を守る優れた仕組みだからこそ、それを乱用する人が増えることで制度そのものが疑問視されてしまうことは避けたいものです。
また、アブセンティーイズムが生じてしまった根本の理由こそ、本来企業・個人が向き合うべき課題であるはずです。
私たちリーラコーエンは日々、企業様の人事・採用のお困りごとや、転職希望者の声に耳を傾けております。
在シンガポール企業やシンガポールでの転職を目指す方々のパートナーとして、信頼できるサポートを心掛けております。
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