なぜシンガポールの教育は世界トップレベル?PISA最新結果から見る「学力の強さ」とこれからの課題

こんにちは! リーラコーエン シンガポール リサーチャーのShihoです。
シンガポールの教育水準の高さが、改めて注目されています。
2026年9月に発表されたOECDの「PISA 2025」では、シンガポールの15歳が読解力で世界1位、数学・科学でも世界2位となりました。
小学校卒業試験であるPSLEなど、子どもの頃から高い学力を育てる仕組みがある一方で、今のシンガポールでは「学校を卒業した後も学び続けること」も重要なテーマになっています。
今回は、シンガポールの教育制度から、近年話題に上がるリスキリング (reskilling) や生涯学習まで、学びとキャリアのつながりを考えてみます。
【過去記事】
まさにグローバルスタンダード!シンガポールの教育システムとその特徴とは
【PSLE2026】シンガポールのPSLEとは?企業が知っておきたい、働く親へのFWAと人材定着
【 目次 】
1. シンガポールの15歳が世界トップクラスに!最新のOECD調査
2. 高い学力を支えるシンガポールの教育とは?
3. もう一つのOECD調査が示した「大人の学び」の課題
4. シンガポールでは、ますます「学校を卒業してからの学び」も重視
5. 最後に
1. シンガポールの15歳が世界トップクラスに!最新のOECD調査

2026年9月、OECDが国際学力調査「PISA 2025」の結果を発表しました。
PISAは、世界の15歳を対象に、読解力・数学・科学など、実生活で必要となる知識や能力を測る国際的な調査です。
今回は91の国・地域から約76万人が参加しました。
シンガポールは、読解力で1位、数学・科学で2位と、今回も世界トップクラスの成績を収めました。
注目すべきは、平均点の高さだけではありません。
数学では89%、科学では90%、読解では86%の生徒が、PISAで定める最低到達レベル以上に達しています。
さらに、AIチャットボットを学習に週1回以上利用する生徒も66%に上り、デジタル時代に必要な学びへの対応も進んでいます。
一方で、社会経済的な背景による学力差や、デジタル機器・AIの活用など、今後の課題も見えてきます。
では、なぜシンガポールの15歳は、これほど高い学力を身につけているのでしょうか。
2. 高い学力を支えるシンガポールの教育とは?

なぜシンガポールの教育はこれほど高い評価を受けているのでしょうか。
ここでは、教育制度そのものを一から説明するのではなく、「学力を支える仕組み」に焦点を当てます。
幼少期から段階的に学力を評価する仕組み
シンガポールでは、Primary (小学校) の最終学年にPSLE(Primary School Leaving Examination)という全国統一試験があります。
PSLEは現在も重要な節目の一つですが、2021年からは従来の細かな点数による順位付けから、各教科の到達度を示すAchievement Level (AL) 方式へ変更。
これを、過度な競争や、点数の細かな差による順位付けを抑えることが狙いの一つだと説明しています。
さらに2022~2024年にかけて、Full Subject-Based Banding (Full SBB) という新しい仕組みも導入されています。
以前のシンガポールでは、中学校に進学する際、学力に応じて「Express」「Normal (Academic) 」「Normal (Technical) 」というコースに分かれる仕組みがありました。
Full SBBでは、このような一律のコース分けを廃止。
中学校への進学時は学力に応じて3つの「Posting Group」に分かれますが、入学後は教科ごとに自分の得意・不得意や学習ペースに合わせて、異なるレベルの授業を選べるようになっています。
これにより、「すべての教科を同じレベルで学ぶ」のではなく、得意な科目はより高いレベルに挑戦し、苦手な科目は自分に合ったレベルで学ぶといった、より柔軟な学び方ができるようになっています。
こうした改革からも、シンガポールの教育が「学力で一律に振り分ける」だけではなく、一人ひとりの学習ニーズに合わせる方向へ舵取りを変化させていることが分かります。
英語+母語のバイリンガル教育
シンガポールの教育を語るうえで欠かせないのが、バイリンガル教育です。
英語を共通言語として学びながら、中国語・マレー語・タミル語などの母語教育も重視。
多言語環境の中で学ぶことは、シンガポール社会の特徴とも言えるのではないでしょうか。
シンガポールでは、アクティブラーニングやデジタルリテラシー、協働学習など、単純な暗記だけではない能力を育てる取り組みも進められています。
今回のPISA 2025で「コンピュータ型問題解決」が高く評価されたことは、こうした教育の方向性とも重なっています。
3. もう一つのOECD調査が示した「大人の学び」の課題

ここからは、少し意外に思われるかもしれない話をご紹介します。
子どもたちが世界トップクラスの学力を示すシンガポールですが、学校を卒業した後の「学び」については、別の課題も見えてきます。
OECDの「Survey of Adult Skills 2023」では、シンガポールの成人のスキルは、数学( Numeracy) ではOECD平均を上回る一方、読解力( Literacy) はOECD平均を下回る結果となりました。
この結果について、CNAでも、シンガポールの成人のリテラシースキルと年齢の関係が取り上げられています。
CNAの記事では、OECDの調査結果をもとに、成人のリテラシーが35歳以降に低下する傾向や、デジタル化による情報の読み方・使い方の変化などについて、専門家の見解が紹介されています。
こうした状況を考えると、今後ますます重要になるのが「大人の学び続ける力」です。
国際情勢や経済環境、テクノロジーが目まぐるしく変化する中、学校で身につけた知識だけで、長いキャリアを乗りきることは難しくなっています。
AIやデジタル技術によって、仕事の進め方だけでなく、情報の集め方や判断の仕方そのものも変わりつつあります。
これから求められるのは「一度身につけた知識」だけではありません。
新しい情報を読み取り、考え、必要に応じて学び直す。
そして、場合によっては、これまでとは異なる仕事や分野に挑戦する。
こうした「学び続ける力」が、これからのキャリアにおいてますます重要になってきています。
4. シンガポールでは、ますます「学校を卒業してからの学び」も重視

こうした変化を受け、シンガポールでは、学校教育だけでなく、社会人になってからの学び直しやスキルアップも政策として近年より重視されてきています。
その代表的な取り組みが「SkillsFuture」です。
SkillsFutureは、シンガポール国民が年齢やキャリアの段階にかかわらず、継続的にスキルを身につけ、キャリアを発展させていくことを支援する国の取り組みです。
特に近年は、ミッドキャリア層への支援が強化されています。
例えば2024年5月からは、40歳以上のシンガポール国民を対象にSkillsFuture Creditが4,000シンガポールドル追加されました。
また、2025年からは、対象となる長期のフルタイム研修に参加する40歳以上の人を支援する「SkillsFuture Mid-Career Training Allowance」も導入されています。
これは単に「資格を取るための支援」というより、キャリアの途中で新しいスキルを身につけたり、場合によっては別の分野へ転向したりするための「学び直し」を支援する仕組みといえます。
シンガポールでは、教育を「学校にいる期間だけのもの」と捉えるのではなく、社会人になってからも続くものとして考える動きが強まっています。
子どもたちの高い学力を支える教育制度に加えて、社会人のリスキリングや生涯学習まで含めて考えると、シンガポールが目指しているのは「子どもの頃に学んで終わり」ではなく、「人生を通じて学び続ける社会」であるように感じられます。
6. 最後に

シンガポールの教育は、世界的に見ても非常に高い水準にあります。
今回のPISA 2025の結果でも、その実力は改めて示されました。
一方で、PSLEをはじめとする競争的な教育環境や、成人後のリテラシー能力の維持など、考えるべき課題もあります。
「世界トップの教育=すべてが完璧」というわけではありません。
むしろ、高い成果を上げているからこそ、その次に何を目指すのか。
シンガポールの教育は、今まさに「高い学力を身につける教育」から「生涯にわたって学び続ける教育」へと、次のステージへシフトチェンジしています。
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