【PSLE2026】シンガポールのPSLEとは?企業が知っておきたい、働く親へのFWAと人材定着

こんにちは! リーラコーエン シンガポール リサーチャーのShihoです。
シンガポールでお子さんが公立学校に通う家庭にとって、避けて通れないのがPSLE (Primary School Leaving Examination) 。
PSLEは、シンガポールの小学校最終学年で受ける全国統一試験です。
これは単なる「卒業試験」ではなく、その後の中等教育への進路にも関係する重要な試験です。
SEAB (Singapore Examinations and Assessment Board) も、PSLEをPrimary 6 (小学6年生) 終了時の進路振り分けのための全国試験と位置付けています。
そのため、Primary 6のお子さんを抱える家庭にとって、PSLEの時期は精神的にもスケジュール的にも負担が大きくなります。
この時期、親である社員が「少し勤務時間をずらしたい」「在宅勤務をしたい」「子どもの送り迎えのために会議時間を調整したい」と申し出ることも少なくありません。
その場合、会社はどう対応すべきでしょうか。
本ブログでは、シンガポール社会で重要な意味をもつPSLEを通して、雇用企業が社員に長く満足して働いてもらうためのヒントを探ってまいります。
※本記事は、執筆時の2026年9月時点での情報を元に作成しています
【 目次 】
1. PSLEの基本: 「小学校の卒業試験」以上の意味をもつビッグイベント
2. 会社は「PSLE休暇」を与えるべき?
3. 「制度はある」の落とし穴
4. PSLE期間に会社ができること
5. 公平性よりも、会社の姿勢が問われる
6. 最後に
1. PSLEの基本: 「小学校の卒業試験」以上の意味をもつビッグイベント

今年2026年のPSLEは、すでに8月12・13日の口頭試験から始まっています。
続いて9月15日にリスニング試験、そしていよいよ9月24日から主要科目の筆記試験が始まります。

P6の子どもを持つ家庭にとって、ここからの数週間は、試験直前の学習、試験当日の送り出し、生活リズムの調整、そして子どもの精神面のサポートなど、親の関わりも大きくなる時期です。
特に9月24日からの筆記試験は、平日に連続して実施されます。
そのため、この期間は
・朝の送り出しのために始業時間を遅らせたい
・試験会場への送迎が必要になる
・試験後の子どものケアのため、早めに仕事を切り上げたい
・試験期間中だけ在宅勤務を利用したい
・子どもの不安や緊張に対応するため、通常より家庭で過ごす時間を増やしたい
といった要望が企業・上長に寄せられる可能性があります。
私たち外国人からすると、「小学生の試験のために、そこまで仕事を調整する必要があるの?」と思うかもしれません。
しかし、シンガポールでPSLEはその後の中等教育への進路に関係する重要な試験です。
PSLEを単なる「子どもの学校行事」と捉えるのではなく、社員の家庭生活にも一定の影響を与える時期として理解しておくことが、シンガポールで働く企業やマネージャーにとっては肝要です。
試験前の準備から、複数の試験日、そして11月の結果発表 (現時点では11月24・25日を予定) まで、長期間にわたる一大イベントと考えたほうが実態に近いでしょう。
【 過去記事 】まさにグローバルスタンダード!シンガポールの教育システムとその特徴とは
2. 会社は「PSLE休暇」を与えるべき?

このようにPSLEはたしかにシンガポール社会において重要なものですが、PSLE専用の法定休暇があるわけではありません。
一方、シンガポールではFlexible Work Arrangement (FWA) に関するTripartite Guidelinesが2024年12月1日から施行されています。
このガイドラインは、従業員が正式にFWAを申請した場合に、雇用主が適切に検討し、回答するためのプロセスを定めたものです。
「子どもがPSLEだから会社は必ず休ませなければならない」というわけではありませんが、「家庭の事情だから仕事とは関係ない」と切り捨ててしまうのも、現在のシンガポールの働き方とは必ずしも合っていません。
Flexible Work Arrangementという言葉からは、真っ先に「在宅勤務」をイメージする方も多いかもしれません。
ただ、FWAには在宅勤務だけでなく、以下のような事項も含まれます。
・始業・終業時間をずらす
・一時的に勤務時間を変更する
・勤務時間を短縮する
・仕事の量を調整する
シンガポール政府も、FWAは単なるWork From Home (在宅勤務) ではなく、働く時間や仕事量、働く場所について柔軟性を持たせるものだと説明しています。
2026年にも、FWAが介護・育児を担う人の就業継続や、企業の人材確保・定着に役立つことが政府から示されています。
3. 「制度はある」の落とし穴

会社の規定に、「Flexible Work Arrangementあり」と書いてあったとしても、社員が「こんなことで申請したら、上司にどう思われるだろう?」と感じているようなら、制度は機能していない、と言わざるを得ません。
「みんな出社しているから」
「忙しい時期だから」
「子どものことは家庭で対応するもの」
という空気が、もし会社に蔓延しているとしたら、昨今のシンガポールの労働市場では人材流出につながる可能性もあります。
実際、MOM (人的資源省) もFWAが企業にとって人材プールを広げ、社員の定着や生産性向上につながると説明しています。
4. PSLE期間に会社ができること

PSLEに臨むお子さんを抱える社員が社内・チーム内にいる場合、重要なのは既存の制度を「使っていいよ」と明確に伝えることです。
例えば、「P6のお子さんがいる方は、PSLE期間中、必要に応じて勤務時間の調整や在宅勤務を利用していいからね」とマネージャーが一言伝えるだけでも、社員にとっては大きな意味があります。
また、
・朝の時間帯に重要な会議を集中させない
・緊急 / 重要度の低い会議を減らす
・子どもの送り迎えに合わせて始業・終業時間を調整する
・試験日の前後だけ柔軟な勤務を認める
といった対応も考えられるでしょう。
「特別扱い」ではなく、「一定期間の合理的な柔軟性」と捉えることで、企業・社員双方にとってきっと気持ちの良い対応となるはずです。
5. 公平性よりも、会社の姿勢が問われる

ここまで話を進めてきましたが、中には「子どもがいる社員だけ優遇するのは、不公平なのでは?」 ― そう考える方もいるかもしれません。
しかし、柔軟な働き方を用意することは「お子さんがいる人への特別扱い」ではなく、社員それぞれの事情に応じて仕事を続けられる環境をつくることでもあります。
そして、その対応を見ているのは子育て中の社員だけではありません。
お子さんのいない社員であっても、例えば介護など将来自分に家庭の事情、不測の事態が生じたとき、「この会社は、自分の事情にも理解を示してくれるだろうか」と考えるかもしれません。
つまり子育て社員へのPSLE対応を通して、会社が社員の人生をどれだけ尊重するのかを、全社員に示すメッセージ・機会でもあるのです。
もちろん、すべての職種で自由な働き方ができるわけではありません。
しかし、例えばオフィスワークを中心とする職種であれば勤務時間を1~2時間ずらすことと、仕事の成果が落ちることは必ずしも同じではありません。
また、フレキシブルな勤務体制を作ることで、優秀な人材の退職を防ぐという大きなメリットがあります。
シンガポール政府も、FWAについて、人材確保・定着や生産性の向上という企業側のメリットを明確に認識しています。
6. 最後に

PSLEは、シンガポールにいる子どもとその家庭にとって大きな意味をもつ試験です。
これは企業にとっても、「社員の家庭生活をどこまで理解し、支援できる会社なのか」を示す良い機会でもあります。
PSLEのために特別休暇を義務化する必要はありませんが、会社から社員に「必要であれば柔軟に働いてくださいね」と明確に伝えること。
そして、社員が実際にその制度を利用したいと申し出たときに、「なぜそんなことで休むのか」という態度ではなく、「どうすれば仕事と家庭を両立できるか」を一緒に考えること、これらが社員にしてあげられることだと言えます。
PSLEに限らず、子育て、介護、家族の病気、学校行事など、社員の人生には仕事以外の事情もあります。
シンガポールで人材を採用し、長く働いてもらいたい企業にとって、「社員は仕事だけをする存在ではない」という当たり前のことを、制度だけでなく日々のマネジメントで実践できるかどうか…。
それが、これからの人材定着を左右する一つのポイントになるのではないでしょうか。
【過去記事】2025年版 : 働く親と企業にとってのPSLE / シンガポール社会での教育と人材マネジメント
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