働く親と企業にとってのPSLE / シンガポール社会での教育と人材マネジメント
こんにちは! リーラコーエン シンガポール リサーチャーのShihoです。
毎年8月も半ばを過ぎると、シンガポール中で話題になるもの - かの有名な、PSLE (Primary School Leaving Examination、小学校卒業試験) です。
学歴主義が顕著なシンガポールでは、小学校卒業時の試験が進路を決め、引いては人生を大きく左右すると言われています。
齢12で人生の大方が決まる事実に、日本の田舎町でのびのび育った自身としては戦慄を憶えますが、建国以来、教育を重要視してきたシンガポールの方針です。
あなたの周りに、お子様がPSLE試験を控えた方もいらっしゃることと思います。
今回は、シンガポール社会で大きな意味を持つPSLE試験についてと、お子様が試験を控えるシンガポール人同僚への対応というテーマでお届けしてまいります。
【目次】
1. PSLEについておさらい
2. 子どもの試験が、職場にまで影響を及ぼす!?
3. 子どもの試験を控えた従業員に、周囲ができること
4. 最後に
1. PSLEについておさらい
PSLE (Primary School Leaving Examination) とは、シンガポールで小学校を卒業する際に全員が受けなければいけない全国統一テストです。
例年8〜10月頃に実施されており、今年2025年は8月13日に始まり、10月1日まで予定されています。
試験科目は英語、母語 (中国語/マレー語/タミル語ほか) 、数学、理科の4教科で、言語科目はリスニングだけでなくスピーキング試験も含まれます。
この記事を公開する9月16日月曜日はちょうど、リスニング試験当日です。
2025年PSLEの主なスケジュール
8月13〜14日 |
英語、母語 スピーキング試験 |
9月16日(月) |
英語、母語 リスニング試験 |
9月25日(木) |
英語 筆記試験 |
9月26日(金) |
数学 筆記試験 |
9月29日(月) |
母語 筆記試験 |
9月30日(火) |
理科 筆記試験 |
10月1日(水) |
高度母語 筆記試験 |
PSLEはマレー連邦に属していた頃の1960年から導入され、初期はエリート選抜や国の教育水準を急速に引き上げることが目的とされていましたが、時代や国の発展に合わせて目的も徐々に変化してきており、2000年代に入ってからは「子どもの多様な能力を評価する」方向性にシフトチェンジしています。
2021年には従来の偏差値方式から大きく脱し、Achievement Levelという絶対評価方式に変更されました。
これによりスコアの数点差で進学先が大きく変わるプレッシャーが緩和されています。
【参考ウェブサイト】教育省 PSLEスコアのシステム説明ページ
【過去ブログ】【5分で徹底解説】学歴重視社会のシンガポールでの第一ステップ、"PSLE"とは?
2. 子どもの試験が、職場にまで影響を及ぼす!?
時代による変化はあるものの、子持ち家庭においてビッグイベントであることには変わりがないPSLE。
子どもにとってはもちろん、彼らを支える親にとっても日常の生活リズム、職場での生産性、家族の心身の健康など、大きな影響を与える出来事です。
企業にとってこういった試験シーズンは、人材マネジメントと定着のチャンスでもあります。
子持ち家庭の従業員を積極的に支援することで、彼らの忠誠心を高め、ストレスに起因する欠勤を減らし、競争の激しいシンガポールの労働市場で強い雇用ブランドを築くことができると言えます。
親のストレスと生産性
シンガポール教育省によると毎年4万人近くの生徒がPSLEを受験しています。これは、8万人近くの働き世代が子の学習時間の管理や精神的なサポートを仕事と両立していることになります
ワークライフ・インテグレーション
本試験が近づくと、多くの親が急な休暇を取ったり、勤務時間を調整したりしているそう。中には数週間単位で長期の休みを取る人もいて、職場に柔軟な制度がなければ従業員と管理職の間にひずみが生じる可能性もあります
定着リスク
HRM Asiaの調査では、シンガポールではワークライフ・バランスが離職理由のトップ3に入るほど。試験期間中に子持ち家庭の従業員のニーズを無視することは、離職につながる可能性があります
3. 子どもの試験を控えた従業員に、周囲ができること
お子さんの重要な人生の岐路に立ちあう親が、従業員の中にいたらー。
彼らが試験前後のストレスと仕事を両立するために、職場や上司・同僚はどのように支援していけばいいでしょうか。
以下にアイデアをお伝えしてまいります。
【企業にできること】
・柔軟な勤務制度
- ハイブリッド勤務やフレックスタイムを導入し、親が子どもを見守れるようにする
- オペレーション職ではシフト交換を可能にし、試験期間の不在に対応できるようにする
・ウェルネス・メンタルヘルス支援
- ストレスマネジメントを含む従業員支援プログラムを提供する
- 親と子ども双方を対象にした試験ストレス対策のセミナーやウェビナーを開催する
・家族を優先する休暇制度
- 一部の先進企業では「試験休暇」を導入
- 試験当日の早めの退勤など、小さな配慮でも大きな効果がある
【上司・同僚にできること】
・成果ベースで評価し、一時的な生産性低下をペナルティにしない
・共感力の高いリーダーシップを実践できるようマネージャー教育をする
・多大なストレスを抱えているようだったらじっくり話を聞く
企業や部署などそれぞれ事情は異なるので、これらを安易に導入すれば良いという話ではなく、大事なのは従業員の人生の一大事に「寄り添う」姿勢です。
職場の事情もありながら、周囲が精一杯サポートしてくれていることを感じることで、その従業員は感動し、職場へのロイヤリティ、仕事へのモチベーションも上がることが期待できます。
4. 最後に
弊社による「APAC労働力ホワイトペーパー2025」によれば、シンガポールの労働者の71%が「ワークライフ・バランス」を、雇用先を選ぶ最重要要素の一つとしています。
特に30〜40代の中堅層はシンガポールの労働力の中核を担っており、家庭重視の方針を示す企業に強い魅力を感じる傾向にあります。
企業は親世代のニーズに寄り添うことで長期的な忠誠心を育み、ひいては離職や採用コストを抑えるという利点に繋がるでしょう。
今年のPSLEも、もうすぐ山場。
重大な試験に挑む親子が近くにいたら、労いの言葉をかけてあげたいものです。
【関連記事】
まさにグローバルスタンダード!シンガポールの教育システムとその特徴とは
===============
日系の人材紹介会社リーラコーエン シンガポールは、
シンガポールでのフルタイムやパートタイムでのお仕事紹介だけではなく、あなたに合わせたキャリア構築・面接対策などを無料で承っております。
納得のいく転職を、経験豊富なキャリアコンサルタントが最後までご支援させて頂きます。
シンガポール国内転職・キャリアアップに興味をお持ちの方は、是非お気軽にご相談くださいませ。
★☆最新求人方法はこちらから★☆
また、就労や生活情報など、シンガポールでの時間をより豊かにするための最新情報をブログにてお届けしています。
どうぞお見逃しなく!
シンガポール転職に関する記事はこちらから
シンガポール生活情報の記事はこちらから
シンガポールでの子育てに関する記事はこちらから
またこのブログ内容は、フェイスブックおよびインスタグラムでも配信しておりますので、
是非いいね・フォローをお待ちしております。
>>ついにチャンネル登録者3,500名突破<<<
毎週、シンガポール拠点とその他アジア拠点からお届け!
動画で"海外で働く・生活する"を知る、Reeracoenチャンネル
ぜひチャンネル登録・イイね!を宜しくお願い致します。