こんにちは！　リーラコーエン シンガポール リサーチャーのShihoです。

早いもので今年も残すところわずかとなり、12月半ばを迎えました。

年末を控えて、来年度の人員計画や予算編成に着手されている企業様も多いのではないでしょうか。

シンガポールの労働市場は引き続きタイトな状況が続いており、給与水準や福利厚生に対する従業員の期待も年々高まっています。

2026年に向けた予算策定においては、単なる昇給率の検討にとどまらず、人材の採用・定着を見据えた中長期的な報酬戦略がより一層重要になってきています。

本記事では、最新の市場調査データをもとに、2026年に向けた給与・福利厚生のトレンドや予算化のポイントについてお伝えしてまいります。

来年度の戦略立案の参考として、ぜひご一読ください。

【目次】
1. 変化している、従業員の期待
2. 2026年の主要な給与トレンド
3. 予算化が増えつつある主な項目
4. 給与を超えた報酬戦略「Total Rewards」モデル
5. Reeracoenが支援する、企業の給与戦略設計
6. 最後に

 

1. 変化している、従業員の期待

シンガポールでは労働市場の人材不足と従業員の期待の変化が進んでいます。

インフレ率は2023年の高水準から落ち着きつつありますが、特にテクノロジー、製造、プロフェッショナルサービス分野では依然として昇給に対するプレッシャーが続いています。

AonのAsia Salary Increase Survey 2025によると、 シンガポール企業は2026年の平均給与上昇率をおよそ4.3％と見込んでおり、2024年の4.2％、2025年の4.3％と同水準です。

ただし、給与構造は変化しています。

基本給だけでなく、スキルに応じた手当、ハイブリッドワーク支援、福利厚生プログラムなどにも予算が割り当てられており、これはパンデミック以後の労働者の新たな期待を反映したカタチと言えるでしょう。

2. 2026年の主要な給与トレンド

スキル需要に応じた報酬がより重視されるように

AIエンジニア、サイバーセキュリティ、グリーンエネルギーなどの専門職では、国全体の平均である約4％を大きく上回る8〜12％程度の給与上昇が見込まれています。

多くの企業が、勤続年数よりも高需要スキルを評価する給与体系へと移行しています

業界間の格差は安定化

ここ数年の変動の後、産業ごとの昇給率は落ち着きつつあります。

先述Aonの調査では、ライフサイエンス分野が約4.6％の昇給を見込み、エネルギー分野は約3.5％と低めになるなど、各業界は全国平均付近に位置しています

ボーナスから福利厚生へのシフト

多くの企業がボーナスプールをやや抑制し、その予算を従業員の健康・ウェルビーイング、柔軟な働き方、定着プログラムなどの長期的な取り組みに振り分けています。

これは、一時的な報酬から、長期的な従業員エンゲージメントと忠誠心の向上への重点移行を示しています

 

中小企業の慎重な姿勢

中小企業は一般的に平均よりも低めの昇給計画にとどめる傾向があります。

コスト圧力や慎重な成長見通しを背景に、学習支援制度、社内表彰、柔軟な勤務制度など、コストを抑えつつモラルを高める施策に投資するケースが増えています

インフレ調整後の賃金成長は安定

シンガポール通貨当局 (Monetary Authority of Singapore / 通称MAS) は、2026年のコアインフレ率を0.5〜1.5％と予測しており、実質賃金はプラス成長が続く見込みです。

これは経済の回復力と持続的な採用活動を示す健全なサインと言えます
 

3. 予算化が増えつつある報酬項目

以下は2025年の状況、2026年の見通しと、それぞれの優先ポイントです。

 

4. 給与を超えた報酬戦略「Total Rewards」モデル

給与設計はもはや単なるコストベースではなく、価値ベースの設計へとトレンドが変化しています。

進歩的な企業は、以下のような要素を統合するTotal Rewards (総合報酬) モデルを採用しています。

・役割や地域を超えたキャリア・モビリティの機会 (例えば社内での職種や役割変換や拠点変更など)
・SkillsFutureクレジットと連動した学習パス (国の仕組みを利用したリスキリング)
・柔軟な働き方、ウェルネスデー
・社内表彰やコミュニティベースの提供

こういった総合的なモデルは、従業員の定着を支え、企業のブランド力を強化するでしょう。

また、同時にシンガポールの職場公平性やSkillsFutureの枠組みとも整合するため、受け入れられやすいと言えるでしょう。

5. Reeracoenが支援する、企業の給与戦略設計

このように、ドラスティックに変化していくシンガポール労働市場において、弊社では、企業が競争力のある持続可能な給与戦略を構築できるよう以下の支援をご提供しております。

・業界・職種ごとのカスタマイズされた給与ベンチマーキング
・Reeracoen × Rakuten Insight APAC Workforce Whitepaper 2025によるインサイトの提供
・定着・オンボーディングのプレイブックによる採用ROI改善
・競争力と職場安定性のバランスを考えたコンサルティブな計画支援

弊社は単なる採用支援にとどまらず、シンガポール・APAC地域における人材インテリジェンス・パートナーとしての役割を担う所存でおります。

 

6. 最後に

2026年の予算策定は、単に市場水準に合わせるだけではありません。

従業員が真に価値を感じる施策を見据えた先手の計画が、シンガポールの変化する労働市場で人材を引き付け、定着させる鍵となるでしょう。

2026年も引き続き、シンガポールにおられる皆様の頼られる人材パートナーとして日々努めてまいります。

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