【2026年第2四半期 確定版】シンガポール労働市場調査結果 

人事担当者向けコンテンツSeptember 23, 2026 10:00

こんにちは。

リーラコーエンシンガポール マーケティング担当の野上です。

2026年9月21日、シンガポール人材開発省 (Ministry of Manpower:以降MOM) は、2026年第2四半期 (4~6月) の労働市場調査レポートの確定版を発表しました。

同レポートでは、前期と比べて雇用者数が11,400人増加し、19四半期連続で雇用が拡大したことが分かりました。

失業率も全体で1.9%と低い水準を維持したと伝えられました。

一方で、人員整理の対象者数は前四半期から増加し、人員整理後6カ月以内に再就職した居住者の割合は60.7%から54.9%へ低下しました。

また、注目すべき点は2026年6月時点の求人件数は68,600件。

失業者1人あたりでは1.48件の求人がある計算です。

一見すると、仕事を見つけやすい状況にも見えます。

しかし、今回のデータから見えてきたのは、労働市場全体では雇用が増加している一方で、すべての求職者にとって転職がスムーズに進んでいるわけではないという状況でした。

今回は、2026年第2四半期の労働市場レポートから、企業・求職者双方が押さえておきたいポイントを分かりやすくご紹介してまいります。
 

【目次】
1. シンガポールの労働市場は成長を継続 ただし雇用の伸び方には変化も
2. 求人は6万8,600件、それでも転職に時間がかかる理由とは
3. 「求人1.48件 / 失業者1人」だけでは分からない人材需給のミスマッチ
4. エントリーレベルのPMET求人は3万1,700件
5. 人員整理は増加も、長期的な再就職状況は概ね安定
6. 企業が2026年後半の採用で押さえておきたいポイント
7. 求職者が2026年後半の転職活動で意識したいこと
8. 第4四半期に向けて、今後注目したいポイント
9. 最後に


1. シンガポールの労働市場は成長を継続 ただし雇用の伸び方には変化も

2026年第2四半期の総雇用者数は11,400人増加し、19四半期連続で増加しました。

第1四半期の9,400人増を上回っており、雇用市場全体としては引き続き拡大しています。

一方で、雇用の伸びを誰が支えているかを見ると、前四半期とは異なる動きが見られます。
 

非居住者の雇用は9,200人増加し、建設業や製造業におけるWork Permit保持者の増加が全体の雇用拡大をけん引しました。

シンガポール国民および永住権 (PR) 保持者の雇用増加は2,200人となり、前四半期の5,400人から増加幅が縮小しました。

居住者の雇用は、運輸・倉庫、公共・教育、医療・社会サービスのほか、専門サービス、金融サービス、情報通信などでも増加しました。

また、シンガポール経済は2026年第2四半期に前年同期比5.9%の成長となりました。

第1四半期の6.3%からやや減速したものの、経済成長そのものは続いています。

このように、シンガポールの労働市場は全体として成長を続けています。
 

一方で、その成長がすべての業界・職種に同じように及んでいるわけではありません。

「雇用が増えている」という全体の数字だけでなく、どの業界で、どのような人材の需要が伸びているのかを見ることが現在の労働市場を理解するうえで重要になっています。


2. 求人は6万8,600件、それでも転職に時間がかかる理由

また、今回のレポートで特に注目したいのが「求人は依然として多い一方で、再就職までに時間がかかっている」という点です。

2026年6月時点の求人件数は68,600件でした。

3月時点の73,300件からは減少していますが、失業者1人あたりでは1.48件の求人がある計算になります。

3月の1.46件と比べても、大きく変化していません。

数字だけを見ると、「求人のほうが多いのであれば、転職しやすい市場なのでは」と感じるものの、人員整理の対象となった居住者について見ると、6カ月以内に再就職した人の割合は第1四半期の60.7%から第2四半期には54.9%へ低下しています。

つまり、人員整理を経験した人が次の仕事を見つけるまでに、以前より時間がかかるようになったと捉えることができます。

なお、12カ月以内の再就職率は69.4%から69.8%へと推移しています。

この2つの数字を合わせて見ると、長期的な再就職の状況が大きく悪化しているというよりも、短期的には転職活動が長期化している状況がうかがえます。

求人そのものがなくなっているわけではなく、なぜ求人があるにもかかわらず仕事を見つけるまでに時間がかかるのでしょうか。

その背景の一つとして考えられるのが、企業が求める人材と、求職者が持つ経験・スキルとの「マッチング」です。


3. 「求人1.48件/失業者1人」だけでは分からない人材需給のミスマッチ

失業者1人あたり1.48件の求人があるという数字は、シンガポールの労働市場が比較的タイトな状態にあることを示しています。

しかし、この数字はあくまで労働市場全体の平均です。

企業が必要としているスキルを持つ人材が、現在仕事を探している人の中に十分にいるとは限りません。

例えば、弊社が実施した以前の調査「Singapore Hiring Manager Survey」では、テクノロジー系エンジニア (ハードウェア・ソフトウェア)、営業・ビジネス開発、物流、熟練技能職、プランニング関連職などが、採用が難しい職種として挙げられています。

つまり、「求人件数が失業者数を上回っている」ことと、「企業が必要な人材をすぐに採用できる」ことは必ずしも同じではないということができます。

また、今回求人件数が減少した背景を見ると特に金融サービスや情報通信分野でPMET求人が減少しています。

このことからも、労働市場全体の数字だけを見るのではなく、業界・職種・スキルごとの状況を確認することが重要だと言えるでしょう。

企業にとっては、「求人倍率が高いから人材を採用しやすい」と考えるのではなく、自社が必要とするポジションについて、どのような人材が市場にいるのかを見ながら採用計画を立てる必要があります。

求職者にとっても、現在の経験やスキルがどのような業界・職種で求められているのかを意識することが、転職活動を進めるうえで重要になりそうです。


4. エントリーレベルのPMET求人は3万1,700件 

今回のレポートでは、これからキャリアを築いていく人にとって注目したいデータもあります。

2026年6月時点のエントリーレベルPMET求人は31,700件で、全求人の45.3%を占めました。

3月の32,800件から件数自体は減少していますが、全求人に占める割合は43.6%から45.3%へ上昇しています。

つまり、全体の求人件数が減少するなかでも、エントリーレベルのPMET求人は一定の規模を維持していることが分かります。

MOMは、2026年卒業予定者を対象とした「GRaduate Industry Traineeships (GRIT)」についても、MyCareersFutureやCareers@Govを通じた就業へのルートの一つとして紹介しています。

経験豊富な人材の採用競争が続く職種がある一方で、企業にとっては若手人材を採用し、社内で経験やスキルを身につけてもらうことも人材確保の一つの選択肢となります。

求職者にとっても、経験年数だけでなく自身のスキルやポテンシャルをどのように企業に伝えるかが重要になりそうです。


5. 人員整理は増加も、長期的な再就職状況は概ね安定

2026年第2四半期の人員整理の対象者数は4,620人となり、第1四半期の3,830人から増加しました。

労働者1,000人あたりでは2.0人となり、前四半期の1.6人から上昇しています。

人員整理の増加は、製造業、情報通信、金融サービスなどにおける企業・組織の再編が主な要因となっています。

また、居住者の長期失業率も3月の0.9%から6月には1.0%へとやや上昇しました。
 

一方で、先ほどご紹介したように、人員整理後12カ月以内の再就職率は69.8%と概ね安定しています。

短期的には再就職までの期間が長くなっているものの、12カ月という長い期間で見ると再就職の状況は大きく変化していないことも今回のデータから分かります。

労働市場を見る際には、人員整理の件数だけでなく、その後の再就職状況まで含めて確認することが重要です。


6. 企業が2026年後半の採用で押さえておきたいポイント

それでは、今回のデータを踏まえ、企業が2026年後半の採用で特に意識しておきたいポイントをご紹介します。

人員整理の増加=採用しやすくなった、とは限らない
人員整理の対象者数が増えているからといって、企業が必要とする人材をすぐに採用できるとは限りません。
特に専門性の高いポジションでは、業界経験や職務経験、専門スキルなどの条件が合わなければ、採用には時間がかかります。
採用市場全体の数字だけを見るのではなく、自社が採用するポジションごとの人材需給を確認することが重要です
 

採用には余裕を持ったスケジュールを
現在のシンガポールでは、求人件数そのものは多いものの、すべての職種で人材が豊富にいるわけではありません。
特に採用が難しい職種については、募集を開始してから短期間で採用できるとは限らないため、必要な採用期間をあらかじめ見込んでおくことが大切です
 

採用だけでなく、人材育成・組織づくりも重要に
MOMは、世界経済の先行きに不透明感が残るなか、企業が人材育成や組織変革を進め競争力を高めていくことの重要性にも言及しています。
新たな人材を採用するだけでなく、既存社員のスキル向上や職務の見直しなども含めた中長期的な人材戦略が、今後さらに重要になってくるでしょう


7. 求職者が2026年後半の転職活動で意識したいこと

今回のデータは、企業だけでなく、シンガポールで転職を考えている方にとっても参考になる内容です。

シンガポールでは、失業者1人あたり1.48件の求人がある一方で、人員整理後6カ月以内の再就職率は低下しています。

そのため、「求人が多い=すぐに仕事が決まる」とは限りません。

転職活動が長引いている場合でも、「シンガポールには仕事がない」とすぐに判断するのではなく、自身の経験やスキルが現在どの業界・職種で求められているのかを改めて確認することが大切です。
 

また、弊社の調査では、3カ月以上の失業期間がある候補者について、採用担当者が懸念を持つ傾向も見られています。

例えば最近取得した資格やトレーニング、再就職に向けた明確な動機、関連性の高い職務経験などは、自身の経験やスキルを伝えるうえで重要な要素となります。

転職活動が長引いている場合は、これまでの職務経験を整理するだけでなく、関連する資格の取得やスキルアップ、これまでの経験を活かせる近接職種・業界まで視野を広げることも一つの方法です。

また、求人サイトなどでの直接応募だけに限らず、人材紹介会社などを活用することで自分では見つけにくい求人や、自身の経験に合ったポジションに出会える可能性もあります。


8. 第4四半期に向けて、今後注目したいポイント

2026年後半の採用市場を見るうえでは、企業の採用意欲にも注目したいところです。

今後3カ月以内に採用を予定している企業の割合は、2026年6月の43.9%から7月には48.7%へ上昇しました。

ただ、賃上げを予定している企業の割合は、29.3%から27.9%へとやや低下しています。


採用意欲には改善が見られるものの、2026年2月時点の水準と比べると、採用・賃上げに対する企業の意向はいずれもまだ低い水準にあります。

そのため、企業が採用を再び大きく拡大するというよりも、必要なポジションを見極めながら、慎重に人材投資を進めていく状況が続く可能性があります。

今後は、居住者の雇用増加が回復するのか、人員整理後6カ月以内の再就職率が安定するのかがシンガポールの労働市場を見ていくうえで重要なポイントとなりそうです。


9. 最後に

今回は、2026年9月21日にMOMが発表した、2026年第2四半期 (4~6月) のシンガポール労働市場調査レポートについてご紹介しました。

MOMは、2026年第2四半期の労働市場について、雇用の増加と低い失業率が続いており、全体としては「resilient (底堅い) 」と評価しています。

一方で、居住者の雇用増加が鈍化したほか、人員整理の増加や再就職までの期間の長期化など一部の居住者にとっては環境が厳しくなっているとしています。

求人は引き続き一定数あるものの、労働市場全体の数字だけでは、企業が求める人材と求職者の経験・スキルがどの程度マッチしているかまでは分かりません。

企業にとっても求職者にとっても、こうした市場全体の動きを踏まえながら業界や職種、スキルごとの需給状況に目を向けることが今後ますます重要になりそうです。

2026年後半も、シンガポールの労働市場では業界・職種による違いが続くことが予想されます。

リーラコーエンシンガポールでは、最新の労働市場動向や採用市場の変化を踏まえ、企業の採用活動から求職者のキャリア形成まで、人材面からサポートしています。

シンガポールでの採用・転職についてご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
 

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