シンガポールの公立小学校ってどんなところ?通わせてみて分かった、保護者が感じた大きなメリット【後編】

こんにちは! リーラコーエン シンガポール リサーチャーのShihoです。
シンガポールで公立 (ローカル) 小学校にお子さんを通わせる弊社日本人社員に、シンガポールの学校に関するアレコレを聞いていく本シリーズ、後編をお届けします。
前編では、シンガポールの公立学校について、学校制度や入学の仕組み、学費、学校生活などの情報をご紹介しました。
では、お子さんを通わせている実際にはどんな印象を受けるのでしょうか。
保護者の目を通して見た、シンガポール公立小学校の学校生活について聞いてみました。
日本の学校との違いに驚いたこと、最初は戸惑ったこと、そして「公立学校に通わせてよかった」と感じていることまで、保護者目線でリアルにお話しいただきます。
【この記事の前編はこちら】シンガポールの公立小学校ってどんなところ? 入学・学費・学校生活について保護者に聞いてみた【前編】
【 目次 】
1. 「思っていたより学校の様子が見えない!」― 最初に戸惑ったこと
2. 先生がマイクで授業? 日本とは少し異なる学校の風景
3. 「友達も勉強にシビア」なのはシンガポールならでは?
4. 「運動会がない!」日本との学校行事の違い
5. 「シンガポールで公立校に通わせてよかった!」と思う理由
6. 最初の1週間は泣いていた。でも、今では「学校が大好き」
7. シンガポールならではの経験を、成長につなげてほしい
8. 最後に
1. 「思っていたより学校の様子が見えない!」― 最初に戸惑ったこと

実際にお子さんを通わせてみて、最初に感じたのが「学校での様子が思ったより見えない」ということだったそうです。
学校にもよるとは思いますが、授業参観のような、保護者が普段の授業を見る機会は基本的にはないのだとか。
また、三者面談などもオンラインで行われることが多く、先生と直接顔を合わせる機会は、日本と比べると少ない印象なのだそうです。
もちろん、必要な連絡や情報は学校からきちんと届くとのこと。
むしろ、シンガポールの公立学校では、学校生活のさまざまな場面でデジタルツールが使われています。
学校によって異なるものの、代表的なものとして挙げられるのが以下の3つです。
SLS (Student Learning Space)
SLSは、学校のオンライン学習プラットフォームです。
先生から教材や課題が配布されたり、子どもがオンラインで学習したりするときに使います。
「学校から配られる教材やオンライン授業の教材がまとまっているサイト」というイメージに近いようです。
MIMS (MOE Identity and Management System)
MIMSは、学校で使うさまざまなデジタルサービスにアクセスするためのID・認証システムです。
子どもが自分のアカウントでSLSなどの学校関連サービスを利用するときに使われます。
「学校のデジタルサービスを使うための共通アカウント」と考えると分かりやすいでしょう。
PG (Parents Gateway)
PGは、保護者向けの学校連絡アプリです。
学校からのお知らせを確認したり、学校関連の手続きや案内を受け取ったりする際に使います。
このように、シンガポールの学校では、「学校からのお知らせ」「子どもの学習」「各種サービスへのアクセス」などが、それぞれデジタルで整理されているという印象だそうです。
また、保護者同士では、通話・チャットアプリ「WhatsApp」で保護者グループが作られていることもあるのだとか。
学校からの公式な情報とは別に、保護者同士で情報交換ができるため、こうしたグループは頼りになるそうです。
一方で、完全にデジタルに振り切っているわけではありません。
「Handbook」と呼ばれる連絡帳のようなものもあり、宿題や学校生活で大切なことを子ども自身が書いて持ち帰ってくるそうです。
ただ、子どもが手書きで書いてくるものなので、たまに解読が必要だったり、抜け漏れも発生したりするのだとか (笑) 。
そのため、学校と家庭とのコミュニケーションがないというより、日本とは教師とのコミュニケーションの方法が大きく違う、と考えるほうが正確なのかもしれません。
最初は「何をどこで確認すればいいの?」となりがちですが、慣れてしまえば、こうしたデジタルツールを確認することが日常になっていくそうです。
2. 先生がマイクで授業? 日本とは少し異なる学校の風景
お子さんの入学前に授業風景を見学する機会があったそうですが、授業の様子も、日本とは少し違うと感じたそうです。
たとえば、先生がマイクを使って授業をしていることがあります。
どうやらすべての授業がそういうわけではないようですが、まるで日本の予備校のようで驚いたそうです。
また、小さいうちから教科担任制になっているのも特徴的です。
ホームルームを担当する先生が2人いて、そこに各教科の先生がいるため、教科ごとに先生が変わります。
日本の小学校のように、基本的に一人の先生が多くの教科を担当するスタイルとは違うため、子どもにとっても「教科ごとに先生が違う」という環境に早い段階から慣れていくことになります。
学校や先生によるものの、お子さんから「あの先生はちょっとコワいんだよ」といった話を聞くこともあるのだとか。
ただ、学校生活を通して、いろいろなタイプの先生がいることを知り、それぞれに合わせて接し方を考えるようになっているそうです。
そういう意味では、勉強だけではなく、人との関わり方や自分なりの対処法を身につける、いい経験にもなっていると感じているそうです。
3. 「友達も勉強にシビア」なのはシンガポールならでは?

もう一つ、お子さんの様子を見ていて感じるのが、勉強に対する意識の高さなのだそうです。
例えばシンガポールでは教育に対する関心が高い家庭も多く、子どもたち同士でも小学校低学年のうちから「どの中学校に行きたいの?」といった会話が交わされることもあるのだとか。
小学校卒業試験 (PSLE)という重要な節目やその先を見据えて、幼い頃から将来への意識を共有している家庭があることを、子どもの話から感じるそうです。
そうした環境に刺激を受け、子ども自身が「勉強すること」に対する意識を持つきっかけにもなっているとのことです。
4. 「運動会がない!」日本との学校行事の違い

日本の学校生活を知っている保護者として、意外だったのが学校行事の少なさだったそうです。
すべての学校において同様とは限りませんが、シンガポールの公立小学校には、日本の小学校でおなじみの「運動会」のような大規模イベントはあまりないように感じるとのこと。
そもそも学校によっては、屋外で思いきり運動できるスペースが限られていることもあります。
そのため、日本の学校と比べると、運動会のようなイベントに対する「みんなで盛り上がる!」というテンションとは少し違うそうです。
学校行事も、シンガポールの文化に合わせたものが中心です。
例えば、民族や文化の多様性について考える「Racial Harmony Day」や、シンガポールの独立を祝う「National Day」、国の安全や災害への備えについて考える「Total Defence Day」など。
子どもたちが学校生活を送りながら、シンガポールの歴史や文化、そして「多民族国家としてどう一緒に暮らしていくか」を自然に学ぶ機会が多いのも、現地の学校ならではだと感じているそうです。
日本の学校で当たり前だと思っていたものが、実は日本独自の文化だったのだと気づくのも、異文化の再発見となりそうです。
5. 「シンガポールで公立校に通わせてよかった!」と思う理由

ここまで、戸惑ったことや日本との違いを紹介してきましたが、もちろん「公立学校に通わせてよかった」と感じることがたくさんあるそうです。
その中でも大きいのが、シンガポール人の知り合いや友人が増えたことです。
シンガポールで長く生活していくのであれば、ローカルの人たちと日常的につながれることには大きな意味があります。
学校を通じて子どもにシンガポール人のお友達ができれば、そこから親同士のつながりができることもあります。
インターナショナルスクールや日本人学校とはまた違った、よりローカルに近い環境で生活できることは、シンガポール公立校だからこそ得られる経験だと感じているそうです。
また、現在の公立校では英語以外に、中国語などの他言語に触れる機会があることも魅力の一つ。
言語の面では最初に大変さを感じることもあるそうですが、単に「中国語を勉強する」というだけではなく、学校生活を通してシンガポールならではの文化や考え方に触れられる―。
これは、日本の学校に通っていたら得られなかった経験だと感じているそうです。
教育水準の高さももちろん魅力ですが、それ以上に、シンガポールという国で生活しているからこそ経験できることが多いという点に価値を感じているのだとか。
もちろん、外国人として英語に加えて母語ではない中国語などを学ぶことは、大変だと感じる場合もあります。
そうした場合は、一定の条件のもとでMother Tongueとして言語を履修せず、その授業時間を自習などに充てることもできる点は安心材料になるそうです。
そして、現実的なメリットとして忘れてはならないのが学費です。
インターナショナルスクールなどと比較すると、公立学校の学費は大きく異なります。
もちろん外国人の場合はシンガポール国民とは学費体系が異なりますし、その他にも教材費など学校生活に必要な費用はあります。
それでも、シンガポールで生活しながら、ローカルの教育環境に子どもを通わせられるという点では、大きな選択肢の一つだと感じているそうです。
6. 最初の1週間は泣いていた。でも、今では「学校が大好き」

シンガポールの公立小学校に娘さんと息子さんを通わせていて、最初からすべてが順調だったわけではないそうです。
特に娘さんは、入学して最初の1週間はずっと泣いていたのだとか。
環境が大きく変わるので自然なことかもしれませんが、親としても、そんな様子を見るのは胸が痛かったそうです。
ところが、ある先生に「あなたが泣いて学校に行かなかったら、お父さんとお母さんが仕事に行けなくなっちゃうよ。お家にお金が無くなったら困るでしょ」と言われたのを機に、立ち直ったのだとか 。
「こんな小さな子に対してお金の話!と驚きました。また、その話に納得して状況をすんなり受け入れた娘の意外なタフさも感じました (笑) 」と振り返ります。
なんとも現実的でユニークなエピソードです。
娘さんも、今では「学校が大好き」と言って毎日楽しく学校に通っています。
最初は親も「本当に大丈夫かな」と心配したものの、子ども自身が学校で友達を作り、生活のリズムをつかんでいくことで、環境に馴染んでいったそうです。
ただ、それでも合わなかった場合には「転校」という選択肢もある点が、親にとっては安心材料になり得るとのこと。
これから公立学校への入学を考えているご家庭には、「合わなかったらどうしよう」と不安に感じる方もいると思います。
しかし、最初から「一度入ったらずっと公立学校」と考える必要はありません。
もしローカルの環境がどうしても合わなければ、インターナショナルスクールや日本人学校など、別の教育環境に転校するという選択肢もあります。
7. シンガポールならではの経験を、成長につなげてほしい

シンガポールの公立小学校は、日本の学校と違う部分も多分にあります。
学校の様子が親からは少し見えにくかったり、デジタルツールを使ったコミュニケーションが中心だったり、運動会のような日本ではおなじみの行事がなかったり…。
最初は戸惑うこともあるそうです。
一方で、シンガポール人のお友達ができたり、異なる言語や文化に触れたり、日本とは違う教育環境の中で学んだりできることは、シンガポールの公立校ならではの魅力。
特に、シンガポールでこれから長く生活していくのであれば、学校という日常の中でローカルの文化に触れられることは、とても貴重な経験だと感じているそうです。
「日本と同じ教育を受けさせる」のではなく、「シンガポールだからこそできる経験をさせる」。
そう考えると、公立学校という選択肢も、シンガポールで子育てをする家庭にとって十分検討できる選択肢の一つなのではないでしょうか。
8. 最後に

今回、実際にシンガポールの公立小学校にお子さんを通わせている弊社社員に話を伺い、学校選びでは「日本との違い」をどう捉えるかが大切なのだと感じました。
特に印象的だったのは、最初は学校生活に戸惑っていたお子さんが、今では「学校が大好き」と話しているということです。
海外での学校生活は、親にとっても子どもにとっても、決して最初からすべてが順調とは限りません。
それでも、実際に生活してみることでしか分からないことや、子ども自身が環境の中で身につけていく力もあるのだと思います。
今回、前編 / 後編にわたってシンガポールで公立小学校にお子さんを通わせている保護者の方に色々お話を聞かせていただきました。
シンガポールでの子育てや学校選びを考えている方にとって、この体験談が、現地での学校生活を具体的にイメージするきっかけになれば幸いです。
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