屋上から都市を変える!シンガポールの立体緑化と都市農業の取り組み

こんにちは! リーラコーエン シンガポール リサーチャーのShihoです。
私がシンガポールに来てすぐ抱いた印象のひとつに、都市国家でありながら街に緑が多いということでした。
気候変動の進行や都市人口の増加により、世界中の都市では環境負荷の低減や食料供給の安定化が大きな課題となっています。
こうした中で注目されているのが、「都市緑化」を単なる景観向上にとどめず、都市機能の一部として再設計する動きです。
都市国家であるシンガポールは、限られた土地の中でこの課題に向き合い、先進的な取り組みを進めてきました。
そこで今回はシンガポールが取り組む都市緑化や都市農業、また持続可能な都市作りに向けてのグランドビジョンについてお届けしてまいります。
【目次】
1. 国家主導で進む、「立体的」な都市緑化
2. 緑化だけでなく食料生産!?
3. 緑化政策と都市農業が生む相乗効果
4. 「City in Nature」に立ちはだかる壁
5. 最後に
1. 国家主導で進む、「立体的」な都市緑化

シンガポールでは2026年現在、国立公園庁(NParks)を中心に「City in Nature」というビジョンを掲げています。
これは1967年の「Garden City」、2011年以降の「City in a Garden」に続いて2020年より提唱されており、都市全体を自然と調和させる方針を打ち出しています。
その象徴的な施策の一つが、スカイライズ・グリーナリー (Skyrise Greenery) です。
このプログラムは建物の屋上や壁面、高層部などの「立体緑化」を進め、これまで活用されにくかった都市空間の緑化を目的とするものです。
政府は導入支援制度を通じて、高層ビルや集合住宅への普及を後押ししています。
これによって、ヒートアイランド現象の緩和や生態系の回復、都市景観の向上といった効果に加え、近年では都市空間の多機能化という観点からも注目されています。
その延長線上にあるのが、「緑を育てる」だけでなく「食料生産する」という概念、つまり都市農業です。
2. 緑化だけでなく食料生産!?

シンガポールでは、都市緑化の流れと並行して、屋内農場や垂直農場といった都市型農業が急速に発展しています。
これらは、屋上緑化や壁面緑化と同様に都市空間を有効活用しながら、食料の安定供給を実現する手段として位置づけられています。
都市農業のメリットは多くあります。
天候に左右されにくく、農地を新たに確保する必要も抑えられ、都市近郊での地産地消が可能といった特徴を持ち、環境対策と食料安全保障の両立を可能にすると言われています。
こうした流れの中で、シンガポールでは複数の民間企業が都市型農業に取り組んでいますが、その一例が、屋内垂直農場を展開するGreenphyto (グリーンファイト) 社です。
同社は、ジュロン・ウェスト地区にAIや自動化技術を活用した大規模な屋内農場を運営しており、都市環境の中でも効率的かつ安定的な野菜の生産を実現しています。
高層構造を活かした垂直農場は、都市の限られた空間を「生産地」に転換する、斬新な試みと言えるでしょう。
垂直農場はSky Greens社、V-Plus Agritech社など他にも多くの事業者が取り組んでおり、またそのアプローチも多様です。
V-Plus Agritech社は野菜の栽培と魚の養殖を組み合わせ、魚の排せつ物を植物の栄養源に活かすことで水や肥料の資料量削減も謳っています。
垂直農業で生産される野菜は現在はレタスやバジル、ホウレンソウなどの葉物が主流のようですが、今後より多くの種類の野菜が出ることを期待してしまいますね!
3. 緑化政策と都市農業が生む相乗効果

スカイライズ・グリーナリー施策に代表される立体緑化と都市農業の取り組みは、一見すると異なる分野の施策のように見えます。
ただ、両者に共通するのは「限られた都市空間をどう活かすか」という点です。
シンガポールは、食料自給率が約10%程度にとどまる国です。
そのため、緑化政策も単なる環境美化ではなく、将来的な食料安全保障を見据えた都市設計の一部として位置づけられています。
実際、2030年までに食料自給率を30%まで高める「30 by 30」という国家目標を掲げています。
この目標に向けてシンガポールが重視するのは、都市を横方向だけではなく、縦方向へと広げていく発想です。
屋上や壁面、高層部といったこれまで活用されにくかった空間を緑化するスカイライズ・グリーナリー施策は、都市に新たな余白を見出したと言えます。
特に垂直農場は、その余白を生産機能へと転換してしまうという、都市の課題を逆手に取った先進的な取り組みと言えます。
また、緑化はヒートアイランド現象の緩和や雨水管理、生態系保全といった環境面での効果をもたらす一方で、都市農業は輸送距離の短縮や安定生産によって、食料供給に伴う環境負荷の軽減にもつながります。
これらはそれぞれ独立した取り組みではなく、相互に補完し合う関係にあります。
さらに特筆すべきは、こうした取り組みが都市機能を「多層化」している点です。
従来では都市空間は、居住、商業、業務というふうに用途ごとに分けて設計されることが一般的でした。
しかし、立体緑化や都市農業の導入により、ひとつの空間が「環境」「生産」「暮らし」を同時に支える役割を担うようになっています。
このように、緑化政策と都市農業のハイブリッドは、単に緑を増やしたり、食料を生産したりするための施策ではありません。
都市を消費の場から、循環と再生を生み出す構造へと変えていく試みであり、都市のあり方そのものを問い直す動きでもあります。
4. 「City in Nature」に立ちはだかる壁

ここまで、「City in Nature」ビジョンに向けての先進的な取り組みをご紹介してまいりましたが、このゴールへの道は平坦ではなく、課題も指摘されています。
建物の構造や耐荷重の制約、維持管理のコスト、緑化と食料生産の目的のバランス、さらに都市農業だけでは食料自給率を十分に高められない現実もあります。
また市民や企業の理解・協力も不可欠で、導入や維持に伴う心理的・経済的ハードルも存在します。
それでもシンガポールは、限られた土地や気候リスクという制約を前提に、都市が抱える課題に挑戦する道として、本施策を実行しています。
都市の緑と食料、そして技術の組み合わせが未来の都市づくりにどのような可能性をもたらすのか、今後も注目されます。
5. 最後に

今、都市国家シンガポールが見ているのは、緑を「配置する」ことではなく、「どう活かすか」という視点です。
1960年代に始まった「Garden City」ビジョンは主に景観目的でした。
2011年からの「City in a Garden」では住民の生活の質向上に重きが置かれましたが、現在目指すビジョン「City in Nature」は持続可能性をテーマとしています。
都市の緑は、装飾ではなく機能へ。
シンガポールの事例は、緑化・農業・テクノロジーを組み合わせることで、都市がよりしなやかに進化できることを示しています。
【参考ウェブサイト】
National Park Board (NParks) ウェブサイト
Skyrise Greenery 説明ページ
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