知っておきたい、2023年ナショナルデー演説の要点について 国民の生活や社会は今後どう変わる?

こんにちは。

リーラコーエン シンガポールマーケティング担当の野上です。

先日8月9日のナショナルデーに引き続き、リー・シェンロン首相は先週末、アンモキオ地区にある技術教育研究所(ITE)の講堂にてナショナルデーの記念演説を行いました。

年に何度か行われる首相演説の中でも、ナショナルデーの記念演説は特に多くの国民が耳を傾けるとても大切なイベントの1つです。

昨年の演説では、室内のマスク着用義務の撤廃や、後にその全貌が明らかになった新就労ビザスキームONEパスの概要が発表されるなど、コロナ禍が明けた世の中を見据えた内容が多く取り上げられていました。

対して今年は「コロナ禍が過去のものになった」と明確にしながら、更なる試練に対し、いかに国民が持続可能な生活を送ることができるかを焦点に当てたスピーチといった印象を受けました。

果たして、その詳細はどのような内容だったのでしょうか。

今回は、そんな2023年ナショナルデー演説の内容について、要点をお届けいたします。


昨年の内容はこちら


【目次】
1.高齢化社会への準備と支援
2.公営住宅における種類の再定義
3.第4世代(4G)が取り組む「Forward Singapore」
4.最後に


1.高齢化社会への準備と支援

今回の演説で大きく取り上げられたのが、現在のシンガポールにおける高齢化について、そして高齢者が安心して暮らせる街づくりと支援についてです。

現在、人口の5人に1人が65歳以上の高齢者であるシンガポール。

2030年までにはさらに高齢化が進み、4人に1人となるそうです。

その上で、リー首相は高齢者が元気に年を重ねることができる具体的な支援策として、以下の3点を挙げました。


1-1.Majulah Packageの導入

退職目前の世代の貯蓄をサポートする施策として、国の予算70億シンガポールドルを投じて50歳以上のヤング・シニア層を対象に「Majulah Package」を導入すると発表しました。

これは、所得とCPFの貯蓄に応じて、段階的なサポートが受けられるというもので、3つの要素で構成されています。

まず1つ目が、所得に応じて年間最高1,000ドルの中央積立資金ボーナス(CPF、日本のいわゆる社会保障制度)が支給されるというものです。

該当者は、フルタイム、パートタイムに限らず、通常の雇用者拠出金と被雇用者拠出金に上乗せしてCPF口座にて受け取ることができるそうです。

2つ目が、CPF残高がCPF基本退職金額に達していない場合に最高$1,500のCPFボーナスが一度だけ支給されるというものです。

そして最後に、医療費の支払い用に貯蓄しているCPF口座「MediSave」への最高1,000ドルの支給です。

シニア層に差し掛かった国民の貯蓄をバックアップする本施策は、シンガポールにおける約140万人の高齢者への影響があるとされています。


1-2.Healthier SG への積極的な参画

次に、シンガポール保健省(MOH)が先月新たに始めた取り組み「Healthier SG」への参画です。

まずは60歳以上へのお知らせが徐々に行われているようです。

登録すると、検診や予防接種を受ける時期など、一人ひとりに合わせた健康計画が作成され、いつ何をすれば健康維持に繋がるかのアドバイスを貰うことができます。

このように、かかりつけ医やコミュニティとの密な関係性を通して、予防医療に焦点を当てた生活ができるよう支援を行うとしました。

その他、肉体的な健康だけではなく、メンタル面でも留意する必要があるとし、孤独(1人)にならないよう注意を促しました。

高齢者同士が交流することができるよう、政府が設置したActive Ageing Centres (AACs) などを活用し、周りとかかわりを持ってほしいとしています。

Healthier SGは、まずは60歳以上の国民の参画を積極的に促しており、今後年齢層をさらに下げた呼びかけも行うそうです。


1-3.住まいや周辺環境の整備

シンガポール国民は、「EASEプログラム(Enhancement for Active Seniors)2.0」を通して、自宅へスロープを設置したり、トイレにつかまり棒や床を滑りにくくするなどといった改装を行うことができることとなりました。

他にも、折りたたみ式のシャワーシートや、トイレの出入り口を広くするなど、高齢者の生活をより安全で便利にするための支援を怠らないとしました。

このほかにも、高齢者が近所をより安全かつ快適に移動できるようにするため、高齢者がよく通る道路や連絡通路を整備し、シェルターや休憩ポイントを増やしたり、高齢者が活動的に過ごせるよう、セラピーガーデンやフィットネスエリア、エクササイズ・マシンの増設予定があることも発表されました。


2.公営住宅における種類の再定義

次に、公営住宅の分類の変更に関する内容です。

世界で最も高い住宅所有率を誇るシンガポール。

実にシンガポール人の10人に9人が家を所有しているそうで、そのうち8人は「HDB」と呼ばれる公営住宅に住んでいます。

一方でインフレが続く昨今、MRT駅近くのアクセスがしやすい物件を筆頭に住宅価格が高騰しており、住居の購入に関する施策にテコ入れが必要であったと説明がありました。

その中でも、公営住宅を全ての国民が手に入れやすい価格に維持すること、そして公営住宅間での交流を活発化することを重視すると強調しました。

まず、HDBのタイプを「スタンダード」「プラス」「プライム」という3つのカテゴリーに分けることが発表されました。

従来のHDBを「スタンダード」と再定義する中、来年上半期中に増設となったのが新たな「プラス」と呼ばれる物件タイプです。

プラスタイプは、従来のスタンダードタイプのMOPと呼ばれる購入者の最低所有期間が5年間であることに対し、10年と長期的に居住したい人の購入を優先した物件タイプとなります。

このほか、シンガポールの中央商業エリア(CBD)の近辺に位置するHDBを新たに「プライム」と呼び、今後は再定義された3つのカテゴリーで運用していくと発表されました。


3.第4世代(4G)が取り組む「Forward Singapore」

本来、リー首相は自身が70歳の誕生日を迎える前に首相交代をする意思を伝えていました。

新型コロナウイルスという予期せぬ事態があったため、後任への引き継ぎに少々遅れが生じましたが、今回の演説で、現在は全て計画通り第4世代への世代交代準備が進んでいるとしました。

次期首相は現在副首相を努めるローレンス・ウォン氏です。

演説では、現在ローレンス・ウォン氏が率いる第4世代チームによる新プロジェクト「Forward Singapore」について述べました。

Forward Singaporeは、何千人ものシンガポール国民と対話を行ったのち、国が抱える課題を洗い出したうえで、それぞれ解決へ導くためのアイディアを施策として落とし込むプロジェクトです。

例えば、今後成功するためのスキルをいかに国民に身につけさせるか、弱者へのケアをいかに改善するか、国民としての連帯をいかに強化するか、などが議論されているそうです。

このほか、職を失った労働者がスキルをアップグレードする間の財政支援についても議論されているそう。

これは、いかに次の仕事で長期的に良い仕事に就けるかの準備期間として、スキルアップやトレーニングに励んでほしいという意図が含まれています。

同演説では、シンガポールで働くすべての人がアップスキルやリスキリングを通して成長し続け、同国を支えて欲しいという強い意志が組み取れました。

Forward Singaporeがまとめる報告書は今年後半に発表される予定だそうです。

リー首相は、この報告書がシンガポールが荒波を乗り越えていくための羅針盤となるだろうとしています。

 

4.最後に

今回は、2023年のナショナルデー演説の内容について、その要点をお届けしました。

演説でリー首相は、シンガポールが世界的な課題に直面し、雇用、住宅、生活費などへの不安が高まるなか、今後もしっかりと国民の声に耳を傾け、ニーズに応えていくことを表明しました。

加えて、「独立以来、シンガポールにとって最も困難な試練」と表現した新型コロナウイルスのパンデミックを無事に乗り切ったシンガポールの努力を称賛しながら、今後も1つとなり前進していく姿勢を支持しました。

また、演説からは全体を通して正義、平等、実力主義など、シンガポールの建国の価値観や理想を強調しているような印象を受けました。

これらの価値観は、実際にシンガポールの社会構造にもしっかりと貢献しており、私たちのような外国人が生活し働く環境に良い影響を与えるのではないかと感じます。

また来年のナショナルデーを無事に迎えるまで、シンガポールが平和かつ着実に歩みを進めていくことを願わずにはいられません。

本情報がご参考になれば幸いです。

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