シンガポールの雇用市場は拡大中 それでもなぜ「採用が難しい」と感じるのか?

こんにちは! リーラコーエン シンガポール リサーチャーのShihoです。
2026年に入っても、シンガポールの雇用市場は堅調な成長を続けています。
シンガポール人材開発省 (MOM) の2026年第1四半期労働市場レポートによると、総雇用者数は9,400人増加し、これで18四半期連続の雇用拡大となりました。
また、2026年3月時点の求人倍率 (欠員数÷失業者数) は1.46倍となり、求人数が求職者数を上回る状況が続き、失業率も2.0%と低水準を維持。
このように、一見すると人材採用に追い風が吹いているように見えます。
しかし実際には、多くの企業が「以前より採用が難しくなった」と感じています。
なぜこのようなギャップが生まれているのでしょうか。
今回は、このギャップの背景にある要因について迫ってみたいと思います。
【目次】
1. 数字上は好調なシンガポール雇用市場
2. 採用が難しく感じられる最大の理由は「選択的採用」
3. 2026年後半に向けて注目される採用トレンド
4. 採用企業が今取り組むべきこと
5. 最後に
1. 数字上は好調なシンガポール雇用市場

まずは市場全体の状況を整理します。
2026年第1四半期には、シンガポール市民および永住権保持者 (PR) を含む居住者雇用が5,400人増加しました。
特にAdministrative & Support Services (事務・サポートサービス) やTransportation & Storage (運輸・物流) 分野で雇用拡大が見られています。
また、73,300件の求人に対して失業者数がそれを下回る状況となっており、求職者にとっては依然として有利な市場環境といえます。
2. 採用が難しく感じられる最大の理由は「選択的採用」

一方で、企業側の採用実感は必ずしも楽観的ではありません。
採用市場で起きている大きな変化の一つに、「増員採用」から「欠員補充採用」へのシフトがあります。
弊社リーラコーエンの2026年第1四半期の採用動向データでは、多くの企業が新規ポジションの創出よりも、退職者の補充や組織再編に伴う採用を優先していることが確認されています。
つまり企業は採用を止めているわけではありません。
ただし、新たな人員計画に対しては以前より厳しい投資対効果 (ROI) の検証が行われるようになり、採用承認までに時間がかかるケースが増えています。
その結果、求人は存在して、採用面接も実施されるが、採用決定までが長い…という現象が起きています。
これが「市場は好調なのに採用が進まない」と感じられる大きな理由の一つです。
人材不足は続いているが、すべての職種ではない
求人倍率が高いからといって、すべての職種で人材不足が起きているわけではありません。
現在、シンガポール採用市場で特に不足感が強いのは、
・バイリンガル人材
・専門性の高い技術職
・コンプライアンス・リスク管理人材
・製造業・エンジニアリング関連職
・ファイナンス・会計人材
などです。
特に日系企業がシンガポールで採用する際に求めることの多い日英バイリンガル人材については、依然として需給が逼迫しています。
弊社の調査では、バイリンガル人材や専門職人材は職種や経験によって10〜20%程度の給与プレミアムが発生していることが確認されています。
つまり「人材不足」というよりも、「必要なスキルを持つ人材が不足している」という構造的な課題が続いているのです。
求職者側も慎重になっている
採用難の背景には、企業だけでなく求職者側の変化もあります。
現在の求職者は、単純な給与アップだけでは転職を決断しなくなってきています。
重視されているポイントとして、
・雇用の安定性
・キャリアパスの明確さ
・ハイブリッドワーク制度
・長期的な成長機会
などが挙げられています。
そのため、オファー提示後の比較検討期間が長くなり、選考プロセス全体も伸びる傾向があります。
企業と候補者の双方が慎重になっていることが、採用難を感じる要因の一つとなっているのです。
3. 2026年後半に向けて注目される採用トレンド

こうした状況は、2026年後半の採用見通しとも一致しています。
弊社発表の2026年後半の採用見通しでは、多くの企業が人員計画に慎重な姿勢を維持しながらも、成長分野への投資は継続すると予測しています。
特に注目されるのは
・AI・デジタル関連スキル
・データ分析
・自動化・DX推進
・クロスボーダー業務対応人材
・多言語コミュニケーション人材
といった領域です。
単純な人数拡大ではなく、「必要なスキルを持つ人材への投資」が今後さらに加速すると考えられています。
4. 採用企業が今取り組むべきこと

シンガポール市場で優秀な人材を確保するためには、従来以上に戦略的な採用活動が求められてくるでしょう。
特に注意しておきたいのは、以下の3つのポイントです。
市場水準に沿った給与設計
給与期待値の上昇は、企業が感じる最大の採用課題となっています。適切な給与ベンチマークを把握することが重要です
採用スピードの向上
優秀な候補者ほど複数オファーを受けています。選考スピードの遅れは採用機会の損失につながります
スキル重視の採用への転換
学歴や業界経験だけでなく、実務スキルや将来性を評価する採用手法へのシフトが求められています
5. 最後に

2026年のシンガポール労働市場は、雇用増加・低失業率・高い求人倍率という好調な状態を維持しています。
しかしその一方で、企業は増員よりも欠員補充を優先し、採用判断も慎重になっています。
また、バイリンガル人材や専門職人材を中心としたスキルミスマッチも継続しています。
つまり現在の市場は「採用停止」ではなく、「選択的採用」の時代だと言えるのではないでしょうか。
シンガポールで採用を行う企業様にとっては、給与競争力だけでなく、採用スピードやキャリア提案力がこれまで以上に重要になっています。
一方で、採用が難しい状況は裏を返せば「適切なマッチングの重要性が高まっている」ということでもあります。
市場を正しく理解し、戦略的に採用活動を行うことで、今でも優秀な人材との出会いは十分に実現可能でしょう。
【関連記事】2026年後半のシンガポール人材市場予測 採用・定着で企業が備えるべきこと
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