シンガポール、定年年齢を65歳・再雇用年齢を70歳に引き上げへ 2029年適用 シニア人材の活躍を支援

こんにちは。

リーラコーエンシンガポール マーケティング担当の野上です。

シンガポール政府は、先日の2026年10月26日、法定定年年齢を65歳、再雇用年齢を70歳に引き上げる方針を発表しました。

これは2029年1月1日から実施される予定で、当初の計画より1年前倒しとなります。

今回の発表では、定年・再雇用年齢の引き上げに加え、シニア人材が働き続けやすい環境づくりや、企業による柔軟な働き方の導入を支援する施策も示されました。

働く人の年齢やキャリアが多様化するなか、企業にはどのような対応が求められるのでしょうか。

今回は、シンガポール人材開発省 (MOM) の発表をもとに、制度変更の概要と、企業が今後考えておきたいポイントについて整理してご紹介いたします。


【 目次 】
1. 法定定年年齢は65歳、再雇用年齢は70歳へ
2. 定年年齢の引き上げに加え、6つの提言を発表
3. 企業が柔軟な働き方を導入しやすい環境へ
4. 今から考えておきたい人材活用のポイント
5. 最後に


1. 法定定年年齢は65歳、再雇用年齢は70歳へ

今回の変更は、高齢者雇用に関する政労使の作業部会 (Tripartite Workgroup on Senior Employment:通称TWG-SE) がまとめた提言を政府が受け入れたことによるものです。

現在、シンガポールの法定定年年齢は64歳、再雇用年齢は69歳です。

2026年7月1日に、それぞれ63歳から64歳、68歳から69歳へ引き上げられたばかりですが、今回の発表により、次の引き上げが当初予定されていた2030年から1年前倒しされることとなりました。

主な変更点は以下のとおりです。

・法定定年年齢:64歳から65歳へ
・再雇用年齢:69歳から70歳へ
・実施時期:2029年1月1日

「法定定年年齢」とは、雇用主が年齢を理由に従業員を退職させることができる年齢の基準を指します。

一方、再雇用年齢は、一定の条件を満たす従業員に対して雇用主が再雇用の機会を提供する義務に関わる年齢の上限を指します。

再雇用制度の対象となるのは、シンガポール国民および永住権 (PR) 保持者です。

所定の業務成績や健康状態などの条件を満たすことが前提となるため、すべての従業員が一律に70歳まで働けることを保証するものではないため注意が必要です。

政府は、今回の引き上げは働き続ける意欲と能力のあるシニア人材が、より長く活躍できる機会を広げる取り組みの一環だとしています。


2. 定年年齢の引き上げに加え、6つの提言を発表

今回の提言は、定年・再雇用年齢の引き上げだけではありません。

シニア人材が希望に応じて働き続けられるよう、働き方の選択肢や企業への支援、所得面のサポートなど、幅広い施策が盛り込まれています。

以下に主な内容を見ていきましょう。


柔軟な働き方とキャリア支援の拡充

パートタイム勤務や、複数の企業で専門性を生かすフラクショナル・ワークなど、働く時間や業務量を調整しやすい仕事の創出を支援。

また、シニア人材のキャリア形成を支援する新たな政労使プログラムも設ける方針です。


法定定年年齢・再雇用年齢の引き上げ

前述のとおり、2029年1月1日から法定定年年齢を65歳、再雇用年齢を70歳に引き上げます。


再雇用されない従業員への支援強化

再雇用の機会が提供されない場合などに関わる雇用支援金 (Employment Assistance Payment:EAP) について、支援額を引き上げることが提言されています。


シニア就労者の所得税控除の拡充

定年・再雇用年齢の上限を超えて働く人を対象に、勤労所得控除 (Earned Income Relief) を拡充する方針です。


企業向け雇用支援制度の見直し

既存の高齢者雇用クレジット (Senior Employment Credit:SEC) を見直し、2028年から新たに再雇用クレジット (Re-Employment Credit:REC) を導入する予定です。

これにより、シニア人材の雇用を続ける企業への支援を一層強化していく方針です。


低賃金のシニア労働者への支援強化

低所得の労働者を支援するワークフェア所得補助金 (Workfare Income Supplement:WIS) について、支援内容を拡充する方針です。


現状、これらの提言は政府に受け入れられた、という段階です。

各施策の具体的な適用条件や支援内容については、今後、追加の発表が予定されています。

制度の活用を検討する際には、今後公表される詳細も確認しておくと良いでしょう。


3. 企業が柔軟な働き方を導入しやすい環境へ

今回の発表で注目したい施策の一つが、「Flexi-Load Programme (FLP) 」です。

この制度は、パートタイム勤務やフラクショナル・ワークなど、業務量を柔軟に調整できる就業機会の創出・拡大に取り組む雇用主を支援するものです。

政府は、柔軟な勤務形態を導入する際に発生する移行費用の一部を補助する方針で、2027年末に終了する現行のパートタイム再雇用助成金に代わる制度として導入されます。

例えば、これまでフルタイムで担っていた業務の一部を切り出したり、特定の分野に詳しい人材にプロジェクト単位で関わってもらったりするなど、仕事の進め方を工夫することも考えられます。

こうした仕組みが広がれば、フルタイム勤務を続けることが難しくなった人も、これまで培ってきた経験や専門知識を生かしながら働ける可能性が広がるでしょう。

柔軟な働き方がすべての職種に適しているわけではありませんが、業務の特性や職場の状況に合わせて、どのような働き方であれば双方にとって無理なく続けられるのかを考えることが大切です。

FLPの具体的な支援要件や申請方法などについては、今後の政府発表が待たれます。

現時点では、詳細の発表は来年2027年上半期となるようです。


4. 今から考えておきたい人材活用のポイント

今回の制度変更は、シニア人材の雇用期間が長くなるというだけでなく、企業が年齢や働き方に応じて人材をどう活用するかを考える機会になりそうです。

例えば、従業員の年齢構成や経験、今後必要となるスキルを把握し、定年後の再雇用も含めて、どのような役割を担ってもらうのかといった中長期的な人員計画の見直しをすることも大切です。


また、勤務時間や業務範囲を柔軟に調整できる仕組みを整えることも一つの選択肢です。

従来の勤務形態を維持するだけでなく、業務の特性に応じて働き方を工夫することで、経験豊富な人材が活躍できる場を広げられるかもしれません。


さらに、シニア人材が持つ知識や経験を若手社員の育成や業務の引き継ぎに生かす視点も大切です。

世代を超えて知識を共有できる仕組みを整えることは、個人の活躍だけでなく組織全体の人材育成にもつながるでしょう。

年齢だけで役割を決めるのではなく、一人ひとりの経験やスキル、本人の希望、業務上の要件を踏まえて考えることが、長く働き続けられる職場づくりの第一歩となります。


5. 最後に

今回は、シンガポールで発表された定年・再雇用年齢の引き上げと、シニア人材の活躍を支える新たな施策についてご紹介しました。

2029年1月から法定定年年齢が65歳、再雇用年齢が70歳へと引き上げられるほか、柔軟な働き方の導入や企業への支援なども進められる予定です。

本格的な変更まではまだ2年以上ありますが、こうした変化を受けて、採用活動を通じて必要な人材を確保するだけでなく、社内に蓄積された経験や専門性をどのように生かしていくかも、今後の人材戦略を考えるうえで大切な視点になりそうです。

シニア人材が働き続けやすい環境を整えることは、個人のキャリアを支えるだけでなく、企業にとっても人材の活躍の幅を広げる機会となり得ます。

今後発表される制度の詳細も確認しながら、自社の人員計画や働き方を見直してみてはいかがでしょうか。

本情報がご参考になれば幸いです。
 

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