【2026年第1四半期確報版】シンガポール労働市場調査結果 雇用は予想以上に拡大も、企業の採用姿勢には慎重さも

こんにちは。
リーラコーエンシンガポール マーケティング担当の野上です。
シンガポール人材開発省 (以降MOM) は先日の2026年6月15日、2026年第1四半期 (1〜3月) の労働市場レポート (Labour Market Report) を発表しました。
4月末に公表された速報値では「雇用市場は引き続き堅調」とされていましたが、今回の確報版では雇用者数の増加幅が大きく上方修正され、シンガポールの雇用市場の底堅さが改めて示される結果となりました。
一方で、リトレンチメント (人員整理) の増加や企業の採用慎重姿勢など、今後を見据える上で気になるデータも見られます。
そこで今回のブログでは、速報版からの変更点に触れながら、2026年第1四半期のシンガポール労働市場の最新動向を解説いたします。
【目次】
1. 速報値から大幅上方修正 雇用者数は9,400人増
2. 失業率は引き続き低水準を維持
3. 人員整理は微増 外需依存業界で影響も
4. 再就職率は改善 転職市場は依然活発
5. 求人数はやや減少も、人材需要は依然高い
6. 今後の見通し 雇用市場は堅調も慎重な採用姿勢が続く可能性
7. 最後に
1. 速報値から大幅上方修正 雇用者数は9,400人増
今回の確報版で最も注目されたのは、総雇用者数の増加幅です。
4月時点の速報値では、2026年第1四半期の雇用増加数は5,000人と発表されていました。
一方で、今回の確報版では9,400人増へと大幅に上方修正されました。
これは2021年第4四半期以降、18四半期連続となる雇用拡大です。
MOMは今回の結果について、「世界経済の不透明感が続く中でも、国内需要を中心とした業種が雇用を支えている」と分析しています。
特に運輸・倉庫や事務・サポートサービスでの採用が堅調だったことから、企業活動そのものは依然として活発であることがうかがえます。
また、特に注目すべきはシンガポール国民および永住権 (PR) 保持者による雇用の増加です。
2025年第4四半期:3,100人増
2026年第1四半期:5,400人増
と大きく改善しました。
近年の雇用増加は外国人労働者が中心だった印象から、今回のデータではローカル人材の雇用拡大がより鮮明になった結果となりました。
MOMは、ローカル人材の雇用増加について「幅広いサービス業での採用拡大が背景にある」と説明しています。
また、シンガポール政府が近年進めてきたローカル人材育成政策やスキルアップ支援が一定の成果を上げていることも考えられます。
雇用をけん引したのは運輸・物流とサポートサービス
同レポートによると、このローカル人材の雇用増加を支えた業種としては、事務・サポートサービス、および運輸・倉庫 (Transportation & Storage) の2職種が挙げられています。
シンガポールでは近年、物流インフラやサプライチェーン関連投資が続いており、運輸・物流分野での人材需要が高い状況が続いています。
一方で、外国人雇用は建設業と製造業が中心となりました。建設業では大型インフラプロジェクトや住宅開発が引き続き進行しており、現場人材への需要が継続していると見られています。
サービス業の雇用は予想以上に好調
業種別に見ると、サービス業の雇用増加が速報値から大きく上方修正されました。
速報値では7,400人増とされていましたが、確報版では11,000人増に修正されています。
また、メイドを含むサービス業全体では3,900人増から7,500人増へと改定されました。
サービス業はシンガポールGDPの大部分を占める重要セクターのため、観光需要の回復や消費活動の堅調さが、雇用増加を後押ししていると考えられるでしょう。
2. 失業率は引き続き低水準を維持
失業率は依然として低い水準で推移しています。
2026年3月時点の失業率は、
全体:2.0%
国民・PR:2.9%
国民のみ:3.1%
となりました。速報値では全体の失業率は2.1%でしたが、確報版では2.0%へ下方修正されました。
世界経済の先行き不透明感が続く中でも、シンガポール国内の雇用市場は依然として安定していることが垣間見られる結果となりました。
3. 人員整理は微増 外需依存業界で影響も
一方で、注意すべきデータもあります。
2026年第1四半期の人員整理対象者数は3,830人となり、前四半期の3,690人からわずかに増加しました。
特に増加が見られたのは、製造業、金融サービス、専門サービスなどの海外景気の影響を受けやすい業界です。
ただし、人員整理率は労働者1,000人当たり1.6人と依然として低く、MOMは、今回の人員整理の多くが企業再編や組織改革によるものであり、景気後退による大規模な解雇ではない点を強調しています。
4. 再就職率は改善 転職市場は依然活発
人員整理後の再就職状況については、解雇や人員整理を経験した人のうち、6カ月以内に再就職した割合は60.5%となりました。
この割合は改善傾向が続いています。
2025年第3四半期:55.4%
2025年第4四半期:57.4%
2026年第1四半期:60.5%
MOMはこの結果について、「求職者が転職活動に十分な時間をかけることで、再就職率が高まっている」と分析しています。
人員整理が発生しても、適切なスキルや経験を持つ人材は比較的早期に新たな職を見つけられる環境が続いていると言えるでしょう。
5. 求人数はやや減少も、人材需要は依然高い
2026年3月末時点の求人件数は73,300件でした。
前四半期の77,700件からは減少しましたが、依然として高い水準を維持しています。
MOMは、現状、失業者1人に対して約1.46件の求人が存在しており、求人が求職者数を上回る状況だとしています。
一方で、求人減少の多くはPMET以外の職種で見られており、企業が採用計画を慎重に見直している様子もうかがえます。
6. 今後の見通し 雇用市場は堅調も慎重な採用姿勢が続く可能性
MOMは今後について、「世界経済の不確実性が高まる中でも、シンガポールの労働市場は引き続き底堅さを維持する」との見方を示しています。
一方で、貿易摩擦の激化や海外需要の減速、企業コストの上昇などが重なった場合には、企業の採用意欲が弱まる可能性もあると警鐘を鳴らしています。
特に外需依存度の高い製造業や金融サービス業では、今後の動向を注視する必要がありそうです。
7. 最後に
今回は、MOMが発表した2026年第1四半期労働市場レポートの確報版についてご紹介しました。
速報版では雇用増加数が5,000人とされていましたが、今回の確報版では9,400人へと大幅に上方修正され、特にシンガポール国民・永住権保持者の雇用増加が鮮明となりました。
一方で、人員整理や求人件数の減少など、一部では慎重な動きも見られています。
総じて見ると、シンガポールの雇用市場は依然として堅調ですが、企業は採用計画をより慎重に見極める局面に入りつつあるとも言えるでしょう。
採用をご検討中の企業様にとっては、優秀な人材の確保と定着に向けた戦略がますます重要になるでしょう。
また、転職を検討している方にとっても、市場の変化を踏まえながら自身のスキルやキャリアを見直す良い機会となりそうです。
弊社としても、引き続き市場状況を細かく追ってまいります。
お困りごとがありましたら、お気軽に弊社のコンサルタントへご連絡下さい。
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