シンガポールにおける整理解雇について

こんにちは。

リーラコーエン シンガポールマーケティング担当の野上です。

ようやくポストパンデミックへの舵取りが行われたなか、企業としての新しい在り方を模索されている方も多いのではないでしょうか。

一方で、およそ2年間続いた新型コロナウイルスの影響を受け、やむなく整理解雇を検討をしておられる方からのお問い合わせが多いことも事実です。

今回は、シンガポールの整理解雇について弊社の営業担当がまとめました。
 

【目次】
1.シンガポールの整理解雇について
2.整理解雇を実施する際の政府の指針
3.解雇の予告期間について
4.訴訟の可能性について
5.訴訟に対する予防策について
6.最後に
 

1.シンガポールの整理解雇について

以前は、整理解雇(=会社都合での解雇)と、従業員のパフォーマンスによる解雇の線引きが曖昧で、後者を理由としての解雇が相次いでいました。

それが問題視された結果、法改正が行われ、従業員のパフォーマンスによる解雇が制限されました。

とはいえ、KPIやKGIによる管理を徹底し、「期限内にこの水準に達しない場合、解雇する可能性もある」といったような具体的に就業規則への落とし込みをしている場合には、パフォーマンスによる解雇は今でも可能です。

(しかしその際には整理解雇としてMOMに報告をしなければなりません。)

 

また、シンガポールでは採用の際と同じく、人種、民族、宗教、性別はもちろん、言語や年齢についても解雇の理由として用いることができません。                                            

 

整理解雇を行う際、シンガポールでは会社の規則や法律に則り、人種や性別といった観点からも平等に解雇対象者が選択されることが必要です。

また、具体的に解雇の通知期間(notice period)や通知期間中の有給休暇の扱い等に関しての規定もあります。

しかしこれらは全て法定通り、あるいは法定より「従業員側に有利」な内容でなければ就業規則、契約書に載せてはいけません。

                                    
契約書において、解雇の際のルールを細かく記載していない場合には、シンガポールの労働条件を規定する雇用法(The Employment Act)に従うことになります。
 

2.整理解雇を実施する際の政府の指針

整理解雇を実施する際にシンガポール政府当局(MOM)から出ている指針は下記のとおりです。


相談・報告:

第三者機関である労働組合がある場合は労働組合と相談することが求められます。

10人以上の従業員を抱える雇用主が従業員を整理解雇する場合、整理解雇される従業員の数にかかわらず、必ずMOMに通知することが義務付けられています。

MOMへの通知は、対象となる従業員に整理解雇の通知を行った後、5営業日以内に提出しなければなりません。   
 

通知:

少なくとも法定あるいは雇用契約書で規定した通知期間を守り、従業員に整理解雇の意思を通知するようにします。                             


キャリアサポート:

できる限り従業員が仕事を失って行き詰まることのないよう、関係会社や取引先に代わって仕事を見つけたり、リクルートエージェントに当たって再就職をサポートするようにします。

           
支払:

最終日までの給与や年次休暇の残存日数に関して、支払い漏れのないように給与を支払うようにします。            


解雇手当:

2年以上勤務した従業員の整理解雇には、整理解雇手当(Retrenchment Benefit)を支払うようにします。

整理解雇手当については「一般的慣行」と称して最終の月額基本給(直近で減給が行われていればその前の給与)に勤続年数を掛け合わせた金額またはその1/2を支払うこととされています。)

それに加え、実際は2年未満の勤務者に対しても支払うケースが多いようです。

その場合の額の計算方法は、特に規定はありませんが、1カ月分を支払うことが多いようです。

更には、従業員に通知する際に「Retrenchment benefit」という表現を必ずしも用いる必要はなく、従業員に対しては、「Severance pay」という表現が多く使われます。

次の職を見つけるまでの手当てという意味合いが強くなっています。
 

3.解雇における予告期間について

解雇時には、契約解除の旨を従業員に一定期間前に通知する必要があります。

契約書で定める場合も、雇用法通り、もしくはそれより従業員側に有利に定めるのが好ましいと言えます。

雇用法で定められている解雇予告期間は以下の通りです。
 

雇用期間 解雇予告期間
26週間未満 1日
26週間以上2年未満 1週間
2年以上5年未満 2週間
5年以上 4週間

 

1.双方の合意により、予告なく契約を終了することも可能です。

2.予告期間は、通知した日を一日目として数え、祝日、土日も含めて考えます。

3.年次有給休暇が余っている場合、予告期間中に使うかどうかは、従業員側が選択できます。また、従業員側が希望する場合、有給の買取りにも応じる必要があります。

4.契約書上に定められた一定の金額を、雇用者側に支払うことによって、従業員側が予告期間を待たずに契約を終了することもできます。

 

重大な違反を犯した従業員に対しては、予告期間なしで解雇することができますが、その場合、充分な調査を行った上で行わなければいけません。

また、どういった行為を行うと重大な違反(gross misconduct、 serious offence)となるかについては、具体的に就業規則上に明記されている必要があります。
 

4.訴訟の可能性について

シンガポールには調停・仲裁機関であるTripartite Alliance for Dispute Management (TADM)があります。

従業員は20ドルでTADMを通して会社に対して訴えることが可能です。

従業員にとって“駆け込み寺”のような存在であるTADMの登場により、解雇された社員が訴えを起こすことが容易になった一方で、争う金額は限られており、雇用主にとっては今のところ大きな影響は出ていません。

とはいえ、常に最善の対策を取っておく必要があります。
 

5.訴訟に対する予防策について

上記のようなトラブルを防ぐためには、予め会社の方針として特定の状況下で人を選び、解雇することがあり得るということを雇用契約書に記載しておくことが重要です。

基本的に、就業規則の内容を変更する場合、事後の周知のみで問題のないケースがほとんどです。

しかし、このような従業員の待遇に直接関わる項目を変更する場合、従業員からの合意が必要です。

具体的には、合意が必要な項目は、KETSというガイドラインに掲載されている項目となります。

なお、KETSの項目に関する情報を就業規則上で変更する場合、それに伴い、必然的に雇用契約書も変更する必要があります。
 

6.最後に

今回はシンガポールの整理解雇について詳しくお届けしました。

就業規則/雇用契約書に解雇規定について掲載しておくことは、会社を守るという観点からも全ての企業様が実施しておきたい内容となります。

ご不明な点がございましたら弊社までお気軽にご相談ください。

 

なお、今回お届けした内容は、東京コンサルティングファーム様の監修に基づき、作成いたしました。

【監修】東京コンサルティングファーム様

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