2023年人材市場振り返りと来年の予測
こんにちは。
リーラコーエン シンガポール責任者の副島です。
早いもので、2023年も残すところあと2週間弱となりました。
お取引先様各位におかれましては、この1年間も大変お世話になり、誠にありがとうございました。
シンガポールではコロナ禍が本格的に明け、よりヒトやモノの動きが活発になった1年でした。
社会・経済面ではGSTの8%への引き上げや大統領の交代、主に貿易依存によるインフレの加速などの大きな動き。
そして、世界では引き続きロシアのウクライナ侵攻、ドル高・円安による経済への影響が懸念された1年でした。
人材市場においては、私たち外国人労働者にとって大きな変化となるCOMPASSの導入がありました。
今後の日系企業のシンガポールでの在り方においても節目の1年となったのではないでしょうか。
今回は、この場をお借りして今年のシンガポールの人材市場を振り返るとともに、来年に向けておさえておきたいポイントを皆様へ共有したいと思います。
【目次】
1.2023年の振り返り:シンガポール人材市場
2.来年2024年のポイントについて
3.最後に
1.2023年の振り返り:シンガポール人材市場
今年1年でシンガポールの人材市場は転換期を迎えました。
その大きな要因となったのが、9月に開始されたCOMPASS制度です。
政府としては、ストロング・シンガポリアン・コア政策の一環で、ローカル人材の就労機会を増やすために外国人の就労ビザ取得制度を透明化する目的で導入した本制度。
雇用側からすると、企業の人材採用状況もEmployment Pass新規取得の審査基準として設定されるようになったため、外国人労働者の人数に制限がかかるようになりました。
さらに、それぞれEmployment Pass・S Pass取得のために必要な最低月額給与の引き上げも施行されました。
S PassにおいてはQuota制限の厳格化もありました。
これらのことから、シンガポールで外国人が就労するためのビザ取得のハードルは全体的に上がり、さらにコストもかかるようになっていることから、これまで以上にローカル人材の雇用、また日系企業体制の見直しが急務となった1年でした。
実際に、弊社が今後1年で採用を検討している日系企業様へ採用ニーズを伺ったアンケート調査においても、7割の企業様はローカル人材を採用すると回答しました。
また、ローカル新卒人材の採用率も昨年の7%から10%へ上昇しており、経験のある日本人を採用するより、未経験でもローカル人材を採用するという企業様が増えている傾向が垣間見られました。
シンガポール労働市場全体では、雇用人数は、前四半期と比べ増加したものの、そのペースは前年と比べて鈍化しました。
また、人材省のレポートによると2023年9月時点の失業率は全体で2%(居住者2.8%、市民3%)との結果でした。
直近6月時点の失業率(居住者2.7%、市民2.8%)と比較すると、僅かに悪化しています。
求人倍率は現在約2倍で推移しており、以前ほどの売り手市場ではないものの、外国人人材採用のハードルが上がった今、優秀なローカル人材の確保に向けた競争の激化が見込まれています。
2.来年2024年のポイントについて
COMPASS導入、そして就労ビザ取得要件の厳格化により今後の人員構成や企業の在り方が問われた2023年。
来年もさらなる変化に備える必要があります。ここで来年2024年に向けておさえておきたい、3つのポイントをご紹介できればと思います。
ポイント1.COMPASSがEP更新時にも適用
EPの新規取得にあたり対応に追われた今年ですが、来年9月には更新時にもCOMPASSが適用されます。
これでシンガポールで就労するすべての外国人人材にCOMPASS制度が適用されるようになります。
このため、再度社内の人員の棚卸を行い、残り9カ月間で組織構造を変えることが求められるでしょう。
本格的にローカル採用へのシフトを考えなければなりません。競争力のある給与形態や福利厚生パッケージの導入および定期的な内容の見直しによる企業の魅力付け、選考プロセスの短縮化、シンガポール政府の提供する社員の就労能力維持向上プログラム「WSQ(Workforce Skills Qualification)」の活用など、一例に過ぎませんが自社の競争力強化のためにできることは多数あります。
ぜひ準備の一環として、早めのご検討をいただければと思います。
ポイント2:「Workplace Fairness Legislation(WFL)」の発効
2021年の建国記念日の演説において、リー首相は職場における差別禁止ガイドラインを法制化すると述べました。
ついにその法令「Workplace Fairness Legislation(WFL)」が2024年に発効される予定です。
現在シンガポールでは職場における差別を禁止するTAFEPによるガイドラインがあります。
本ガイドラインでは、雇用主は年齢、人種、性別、宗教、配偶者の有無、家族の責任、または障害に関係なく、スキルや経験、能力などに基づいて従業員の採用を行う必要があるとされています。
このルールを守らない場合は調査後にビザはく奪等の厳しい措置はありましたが、改めて法律として施行されるとなると、ガイドライン以上の効力を発揮することが予想されます。
法律の詳細が発表されていない現段階においては、改めてTAFEPによるガイドラインを見直しておくと良いでしょう。
来年以降は、採用時・配置時においてより一層の注意を払う必要があります。
まずは準備をしておくことをおすすめいたします。
ポイント3:税率が9%へ
次に、税金(GST)の引き上げです。
これまで段階的に引き上げられていたGSTですが、来年1月1日より、いよいよ9%へ引き上げられます。
社内でのGSTに関する取り決めの再確認、インボイス発行システムのアップデートやサービス・費用紹介の資料における価格変更、顧客への告知方法などに備えておく必要があります。
内国歳入庁(IRAS)が発行しているガイドラインを確認し、ご対応されることをおすすめいたします。
なお、再来年2025年1月にはグローバル・ミニマム課税の導入も予定されています。
こちらはまだ1年ありますが、早めの情報収集が不可欠です。
3.最後に
今回は、今年2023年の振り返り、そして来年2024年を迎えるにあたっておさえておきたい3つのポイントをお届けしました。
弊社としましても、ビザの厳格化、そして常に変動する社会・経済状況にいち早く順応し、皆様へ最適なサービスのご提供ができる変化に強い企業であるべく、来年に向けて体制を整えてまいります。
また、人材採用だけでなく、就労ビザ申請代行・派遣社員・業務委託サービス、エキスパートソリューションなど、各社様のニーズに合わせたサービスも幅広くご提供しております。
お困りのことがあれば、お気軽に弊社の営業担当までご連絡くださいませ。
皆様にとって、2024年もより良き1年になりますことを社員一同お祈り申し上げます。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
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