シンガポールの学校いじめ対策が厳格化 鞭打ちを含む新ルールの背景


こんにちは! リーラコーエン シンガポール リサーチャーのShihoです。

4月15日、シンガポール教育省 (MOE) が発表した、いじめ対策ガイドラインが話題になりました。

いじめ加害者に対して停学や成績評価の見直しに加え、場合によっては鞭打ち (!) まで含まれる新たなルールが導入されるというものです。

私自身、思春期真っ只中の子どもを育てる身として今回のニュースは興味深く読みましたが、「そこまでやるの?」と正直驚きつつも、これらは単なる厳罰化というより、社会全体でいじめにどう向き合うかを改めて整理した結果といえます。

今回はこの内容をきっかけに、シンガポールの教育と社会の考え方について考察してまいります。


【目次】
1. シンガポールで進む、いじめ対策の新たな一歩
2. 背景にある、シンガポールのいじめ問題の変化
3. 罰則だけではない、「事前ケア」にも着手
4. 規律と成長を両立させるアプローチ
5. 日本との違いから見える、教育と組織のヒント
6. 最後に

 

1. シンガポールで進む、いじめ対策の新たな一歩


2026年4月、シンガポール教育省 (MOE) は、管轄である7~18歳までが通う公立校・政府系学校におけるいじめや問題行動への新たな対応ガイドラインを発表しました。

今回の大きな特徴は「対応の標準化」と「一定の厳格化」です。

上に掲載した表をご覧になると分かるように、加害者側の停学や拘束、行動評価の引き下げに加え、条件付きで男子生徒への体罰 (鞭打ち) も含まれるなど、日本の感覚からすると踏み込んだ内容に見えます。

これらの措置は2027年までにシンガポール全体の学校で統一して適用される予定で、「学校によって対応が異なる」という不公平感を減らす狙いもありそうです。

教育の現場においてどの学校でも一定の基準が担保されることで、生徒や保護者にとっても予見性が高まり、制度への信頼にもつながっていくものと見られます。


2. 背景にある、シンガポールのいじめ問題の変化

今回の方針転換の背景には、いじめ問題の「質的な変化」があります。

CNAの記事によると、2021~2025年にかけて学校におけるいじめの発生件数は、小学生1,000人あたり平均3件、中学生1,000人あたり平均8件でした。

これは2019〜2023年の期間 (小学生1,000人あたり年間平均2件、中学生1,000人あたり年間平均6件) よりも高い数値となっており、いじめ発覚件数の増加が伺えます。
 

実際の発生件数は緩やかな増加にとどまるものの、SNSの普及によっていじめに関わる画像・動画が拡散される向きもあり、社会的な注目度も高まっています。

以前はクローズだった学校内の問題が、一気に「社会の問題」として可視化されるようになっているのです。

こうした流れを受けて、MOEは2025年から包括的な見直しを開始し、教育関係者だけでなく、保護者や市民など2,000人以上の意見を取り入れながら制度設計を進めており、今回の発表がそれらの成果物の一つとなっています。

 

3. 罰則だけではない、「事前ケア」にも着手


今回発表された取り組みで興味深いのは、罰則の強化だけではなく、防止・抑制など「事前」のケアも強化している点です。

MOEは学校が必要に応じて追加の人員を雇用できるように予算面の支援も行い、青少年支援員や生徒指導の専門スタッフ、保護者対応を専門に行う職員などを配置できる仕組みを整えています。

教師一人に負担が集中するのではなく、チームとして生徒を見守る体制に近づけている、といえるでしょう。
 

さらにテクノロジーも活用して、個別事案の管理や保護者との連絡をよりスムーズにし、問題が大きくなる前に早めに対応できるような仕組み作りも強化されています。

あわせて、教員向けの研修も拡充され、いじめ対応や保護者とのコミュニケーション、トラブル対応など、現場で必要なスキルを継続的に高めていく方針です。

こうした動きを見ると、シンガポールは単に「厳しくする」方向だけではなく、「対応できる人員を増やす」「早く気づける仕組みをつくる」「更なる悪化を起こす前に対応する」という意味で、いじめ対策にしっかり投資していることが分かります。


4. 規律と成長を両立させるアプローチ



シンガポールの教育政策を理解するうえで重要なのが、社会全体に根付く「規律を重んじる価値観」です。

公共の場でのルールが細かく定められていることはよく知られており、チューインガムの持ち込みが原則禁止されていることなどはその代表例として挙げられます。

こうした厳格ともいえるルール設計は、単なる生活上の制約というよりも、多様なバックグラウンドを持つ人々が共に暮らす社会において、秩序を保ち、一定の行動規範を共有するための仕組みとして機能しています。
 

シンガポールは歴史的にも短期間で急速な経済成長を実現してきました。

その背景には、こうした明確なルールと規律に基づく設計が、社会の安定性や予測可能性を高め、結果としてビジネスや教育を含むさまざまな分野の成長を支えてきた面があるのではないでしょうか。

今回の教育分野における取り組みも、学校現場の問題対応にとどまらず、こうした社会全体の価値観に起因した流れの中に位置づけて見ることができそうです。
 

また、今回のプロトコルをよく見ると、「罰」と「育成」がセットで設計されていることが分かります。

たとえば、問題行動を起こした生徒に対して処分を下すだけでなく、カウンセリングや指導を通じて行動の改善を促す仕組みも組み込まれています。

処分の重さも「意図」「影響」「繰り返しの有無」といった要素を踏まえて判断されるため、一律ではなく一定の柔軟性が担保されています。

シンガポールのアプローチは「厳しさ」と「支援」を両立させる設計として、教育現場と企業の組織づくりも根っこで共通しているようです。


5. 日本との違いから見える、教育と組織のヒント

一方で、日本と比較すると、現代の日本の教育現場では体罰は原則として禁止されており、いじめ対応も対話や指導を重視する傾向にあります。

この姿勢は個人の尊重や心理的安全性を重視する点で評価されていますが、現場裁量重視の設計ゆえに学校や地域の教育委員会ごとの対応のばらつきや、初動の遅れといった課題が指摘されることも少なくありません。

その点、シンガポールのように「全国で基準を揃える」アプローチは、対応の迅速さや一貫性という面で強みをもちます。

もちろんそのまま日本に適用されれば良いという話ではありませんが、「どこまでを現場の裁量に任せ、どこからを制度として統一するか」という問いは、日本にとっても重要な意味を持ちます。

また「集団生活によるいじめは一定数発生してしまうもの」という考えから見れば、やはり早期発見の仕組みや一次対応のプロトコルが厳密に定まっていることは、保護者側としても大きな安心・信頼につながります。


6. 最後に

シンガポールが発表した「いじめ対策に関する包括的見直し」の新プロトコルは、いじめ対策の枠を超え、「社会としてどのような人材を育てたいのか」という問いを投げかけているように思います。

明確なルールのもとで責任ある行動を求めるのか、それとも対話を通じて自律的な判断を育てるのかー。

バランスは国によって異なるものの、どこも「意図的に設計された教育」であることが共通しています。

「厳しさ」と「支援」をどう組み合わせるか、「個別対応」と「標準化」をどう両立させるかという点で、教育という枠を超え、組織づくりや人材育成を考えるうえでのヒントとしても多くの示唆を与えてくれます。
 

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【参考記事】
School bullies to face stricter punishments, including suspension and caning (CNA, 15 Apr 2026)
More funding for manpower, easier reporting channels to tackle school bullying (CNA, 15 Apr 2026)
Caning, suspension among standard disciplinary measures in all schools by 2027 to combat bullying: MOE (The Straits Times, 15 Apr 2026)

 

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